※ 図の記載内容を更新しました。(2020年5月21日)
原田博司 情報学研究科教授、加藤数衞 株式会社日立国際電気技術統括、福本昌弘 高知工科大学教授、須崎地区森林組合、高知県商工労働部産業創造課、株式会社STNetらの研究グループは、森林内の樹木や地形等の遮蔽による厳しい見通し外通信環境下における広域系Wi-RANシステム映像伝送試験に成功しました。
国土面積の約3分の2を森林が占める我が国で、本システムを利用することによって、林業分野において情報通信技術による社会リスクの低減や多様な業務の高度化・効率化に大きく寄与できる可能性を示すもので、過疎や従事人口の高齢化の社会課題の解決にむけた利用拡大が期待されます。
研究者からのコメント
現在まで、広域に存在するセンサー、メーター、モニターからの情報を高品質に収容できるWi-RANは、地域医療、遠隔医療、防災、減災用途で実用可能であることを実証してきました。本研究成果は、実用化に向けてあらゆる過酷な環境においても高信頼の無線通信ネットワークを構築する試験の途上で出てきた非常に有意義な成果です。本研究成果では木々が生い茂った山中を移動している人が撮影している映像をリアルタイムで山麓まで伝送できました。結果、現在の林業がかかえる社会リスクも低減できることが実証でき、あらゆる分野での社会リスクを低減することを示す第一歩を踏み出したことになります。
本研究成果のポイント
- 森林による厳しい遮蔽環境下での山中から山麓へのリアルタイム映像伝送を実証
- 中継接続により尾根を越える無線回線延伸を実証
- 林業における原木伐採で必要となる地籍調査ソリューションを実証
概要
林業においては、原木伐採作業に必要不可欠な原木所有者確定のための地籍調査を目的として、山中の映像をリアルタイムで山麓まで伝送するニーズがあります。しかし、このような山中には、基本的には携帯電話回線は十分整備されておらず、そのニーズに適合する無線技術はありませんでした。広域系Wi-RANは、見通し外映像伝送を実現するシステムとして知られており、これまで広域に存在するセンサー、メーター、モニターからの情報を収集する無線通信システムとして、さまざまな見通し外環境での実フィールド試験を、地域医療への応用を中心に行ってきました。しかし、生い茂った森林内を想定した厳しい見通し外環境での実証は行われていませんでしたが、今回、山中の映像を山麓へリアルタイム伝送し、さらに双方向での音声通信を行うことで山麓において山中の詳細な状況把握が可能になることを確認しました。
日本は国土面積の約3分の2を森林が占める地勢にあり、今回の試験結果は、広域系Wi-RANシステムを利用することにより、ICT(情報通信技術)による林業分野における社会リスクの低減や多様な業務の高度化・効率化に大きく寄与できる可能性を示すもので、過疎や従事人口の高齢化の社会課題の解決にむけた利用拡大が期待されます。
図.:実験の様子