山下高廣 理学研究科助教、七田芳則 名誉教授(立命館大学客員教授)、佐藤恵太 岡山大学助教、大内淑代 同教授らの研究グループは、これまで脊椎動物の脳内で働いていると考えられていた光センサーが眼でも機能していることを見出し、従来の脊椎動物の視覚進化モデルを修正する新たな進化モデルを提唱しました。
本研究成果は、2018年10月1日に、英国の科学誌「Communications Biology」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
ヒトは周りの環境をとらえるのに、視覚に大きく頼っています。そのため、「周りのものがどう見えるのか」というのは非常に重要な問題です。本研究では、ヒトを含む脊椎動物の祖先が約5億年前に誕生した際、高度な視覚をどのように獲得したのかについて、分子レベルからアプローチをしたものです。その結果、従来有力に支持されてきた視覚の進化モデルを修正する必要があるのではないかと私たちは考えています。
概要
ヒトを含む脊椎動物は、高度に発達した視覚、特に暗所視と明所視(色覚)を用いて外界から多くの情報を 得ています。この視覚進化に関して、従来は明所視から色覚が先に獲得され、暗所視の獲得がそれに続いたというモデルが有力に支持されていました。
しかし、本研究グループは、鳥類や爬虫類では専ら脳内で働くものと考えられていた光センサータンパク質ピノプシンを解析したところ、魚類や両生類では眼でも暗所視のために働く可能性を見出しました。この光センサーは、眼で広く働く暗所視の光センサーよりも古いタイプのものであるため、従来の視覚進化モデルを修正し、視覚進化の最初期に色覚と暗所視は並行して獲得されたという新しい視覚進化モデルを提唱することができました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s42003-018-0164-x
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/234652
Keita Sato, Takahiro Yamashita, Keiichi Kojima, Kazumi Sakai, Yuki Matsutani, Masataka Yanagawa, Yumiko Yamano, Akimori Wada, Naoyuki Iwabe, Hideyo Ohuchi & Yoshinori Shichida (2018). Pinopsin evolved as the ancestral dim-light visual opsin in vertebrates. Communications Biology, 1:156.