汎用機能性モノマーを交互に並べた高分子を合成することに成功 -温度応答とpH応答機能の交互配列制御-

ターゲット
公開日

大内誠 工学研究科教授、澤本光男 名誉教授(現・中部大学教授)、亀谷優樹 工学研究科博士課程学生らの研究グループは、温度応答性を示す高分子を与えるN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と、pH応答性を示す高分子を与えるメタクリル酸(MAA)が交互に配列した高分子を世界で初めて合成しました。

本研究成果は、2018年7月23日にドイツの国際学術誌「Angewandte Chemie」にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

左から、大内 教授、亀谷博士課程学生

合成高分子に対する配列制御が注目を集めており、私たちも長年研究してきましたが、配列に由来する特性や機能を示した研究はほとんどありませんでした。今回の研究では温度応答性とpH応答性という二種類の明確な機能を示すモノマーユニットを交互に配列させることに成功し、ランダムに配列させたものと物理刺激に対する応答が異なることを明らかにしました。また、今回見出した配列制御手法は拡張性があり、今後さまざまな機能基の配列制御に展開できるために、高分子における配列科学、医用材料をはじめとする材料工学の発展に寄与できると期待しています。

概要

本研究グループは、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)とメタクリル酸(MAA)が交互に配列した高分子を世界で初めて合成しました。NIPAMとMAAそれそれのポリマー(PNIPAM、PMAA)は温度応答性、pH応答性を示し、機能性高分子材料の合成に用いられる汎用モノマーです。

本研究で得られたNIPAMとMAAが交互に並んだ共重合体は低温の水に溶解しますが、その水溶液を徐々に温めるとゆっくり濁りました。温度に応答して濁る現象はPNIPAMと同じですが、ある温度で急激に濁るPNIPAMに比べて幅広い温度領域で温度応答性を示す特徴を示し、pHによって温度領域を変えることが可能であり、温度とpHの二つの物理刺激に応答しました。NIPAMとMAAというそれぞれ温度応答性とpH応答性に関与する汎用モノマーを用いて交互配列を実現したことは、高分子科学や材料工学の観点で極めて重要な研究成果だと考えられます。

図:本研究のイメージ図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1002/ange.201805049

Yuki Kametani, Mitsuo Sawamoto, Makoto Ouchi (2018). Control of the Alternating Sequence for N-Isopropylacrylamide (NIPAM) and Methacrylic Acid Units in a Copolymer by Cyclopolymerization and Transformation of the Cyclopendant Group. Angewandte Chemie, 130(34), 11071-11075.