河合桂吾 農学研究科修士課程学生(研究当時)、橋本渉 同教授、村田幸作 摂南大学教授らの研究グループは、動物の細胞外マトリックス成分であるグリコサミノグリカン(多糖類)を対象とした腸内細菌叢による分解様式を解析し、その分解細菌の中にプロバイオティクス(善玉菌)として知られるある種の乳酸菌を見出しました。また、腸内細菌叢にグリコサミノグリカン分解酵素の遺伝子が高頻度に検出されることを明らかにしました。
本研究は、2018年7月13日に英国の学術誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
病原細菌のみならず、プロバイオティクスも含めた常在細菌が、グリコサミノグリカン(GAG)を分解の標的とすることがわかってきました。今後は、GAGを標的とする微生物(細菌)叢の腸管における動態、およびGAG標的微生物叢による宿主への定着化のメカニズムを明らかにし、病原細菌の感染防御とプロバイオティクスの優勢増殖を図ることにより、疾患抑制と健康増進に資する研究を進めます。
概要
本研究グループは、グリコサミノグリカン(GAG)のうち、コンドロイチン硫酸とヘパリンについて、ヒトの腸内細菌叢(腸内に生息する多種多様な細菌が形成するネットワーク)による分解様式を解析しました。その結果、腸内細菌叢は、最初に食品由来の栄養成分を優先的に分解し、その後、宿主(ヒト)から分泌されるGAGを分解すると考えられました。
次に、GAGを分解する細菌の中に、ヒトに有益な機能をもたらすプロバイオティクス(善玉菌)として知られるある種の乳酸菌を見出しました。また、次世代のプロバイオティクスとして知られるバクテロイデス(痩せ菌)についてGAGの分解性を評価したところ、極めて強い増殖能とGAG分解能を示しました。さらに、腸内細菌叢からバクテロイデスのGAG分解酵素遺伝子が高頻度に検出されることを明らかにしました。
本研究成果は、乳酸菌やバクテロイデスなどのある種の腸内細菌は、食品由来の栄養成分が無くなると、宿主が分泌するGAGを分解して生き残りを図るという、腸内細菌叢の生存戦略を示唆しています。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-018-28886-w
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/233001
Keigo Kawai, Reiko Kamochi, Sayoko Oiki, Kousaku Murata, Wataru Hashimoto (2018). Probiotics in human gut microbiota can degrade host glycosaminoglycans. Scientific Reports, 8:10674.