古川修平 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)准教授、アルナウ・カルネサンチェス 日本学術振興会 外国人特別研究員(現・カタルーニャナノ科学技術研究所独立研究員)、ガビン・クレイグ 同外国人特別研究員らの研究グループは、多孔性材料を合成する新しい手法(ナノ空間重合法)を開発し、微小なコロイド粒子や、ゼリーのように柔らかいゲル状の多孔性材料を開発することに成功しました。
本研究成果は、2018年7月12日に英国の学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
柔らかい材料にナノ空間を埋め込むことができたら、簡単に加工できる新しい多孔性材料ができるだろうという発想で研究を始めました。私たちの研究グループは多孔性金属錯体(PCP/MOF)をさまざまなスケールで合成、加工する研究に取り組んできました。ただ、PCP/MOFのナノ空間を利用するために必要不可欠だと思われてきた結晶性が、成形を困難にしていると感じていました。そこで、本研究では、その結晶性をいったん捨てることにしました。
そして、ジャングルジムのように周期的な構造を組み上げるのではなく、内部にナノ空間を持つ分子(MOP)を超分子重合とよばれる方法で自由につないでいくことで、ゲルのような柔らかい多孔性材料を作ることに成功しました。この柔らかさは、材料としても新しい強みになると思っています。多孔性材料を思いもしなかったところで利用できるように、今後も研究を進めていきます。
本研究成果のポイント
- 設計されたナノ空間をもつコロイド粒子やゲルといったソフトマテリアルの開発に成功
- 金属錯体多面体と呼ばれるナノ空間分子を重合する(つなげる)ことで作成
- これまで成形が困難だったナノ空間材料を自在に設計できる
概要
本研究グループは、多孔性材料を合成する新しい手法(ナノ空間重合法)を開発しました。ナノ空間重合法は、金属イオンと有機分子からなる内部にナノ空間をもつ多面体分子(金属錯体多面体、MOP = Metal-Organic Polyhedraと呼ばれる)をまず合成し、MOPを別の有機分子でつなぐ(重合する)ことで、多孔性高分子材料化する手法です。
また、本研究手法により、コロイド粒子やゲルといった柔らかい材料に、初めてナノ空間が持つ多孔性という機能を加えることに成功しました。この柔らかさを利用した、新しい分離膜材料、薬剤運搬、電子デバイスとの融合などさまざまな応用への展開が期待されます。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-018-04834-0
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/232845
Arnau Carné-Sánchez, Gavin A. Craig, Patrick Larpent, Takashi Hirose, Masakazu Higuchi, Susumu Kitagawa, Kenji Matsuda, Kenji Urayama, Shuhei Furukawa (2018). Self-assembly of metal–organic polyhedra into supramolecular polymers with intrinsic microporosity. Nature Communications, 9, 2506.
- 京都新聞(7月25日 27面)、産経新聞(7月13日 26面)、日刊工業新聞(7月13日 26面)および毎日新聞(8月4日 23面)に掲載されました。