渡邊直樹 生命科学研究科教授、成田哲博 名古屋大学准教授らの研究グループは、細胞内のアクチン重合促進分子とアクチン脱重合分子が、互いに逆方向に線維のねじれ構造を変化させることで、線維の安定性を制御することを発見しました。
本研究成果は、2018年5月14日に、「米国科学アカデミー紀要」(PNAS)のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
細胞の形のダイナミックな変化は、ごく当たり前のようにも見えますが、なかでは細胞表層近くでアクチン線維が盛んに重合と組換えを繰り返しており、それによってようやく形の変化が実現しています。今回見つかった、アクチン線維のねじれを介する重合促進分子と脱重合促進分子のせめぎ合いは、細胞のなかで離れた分子の働きを変えることや特定の線維だけを制御することができるユニークな性質をもっており、生命の「力」による制御のしくみの解明に向けて、新たな枠組みを提供すると考えております。
概要
細胞の中には、重合・脱重合を盛んに繰り返すアクチン線維と、逆に非常に高い安定性を示すアクチン線維が共存しています。これらが細胞の形を保持しつつ、外来からの刺激に応じて迅速に組み換わることで生命現象を支えています。本研究グループは、細胞内のアクチン重合促進分子とアクチン脱重合分子が、線維の安定性を制御することを見出しました。
本研究はアクチン線維先端に結合した、たった1つの重合促進分子が長距離にわたって線維を安定化することを明らかにするものであり、多彩な細胞構造が共存しつつ形成されるしくみについての新たな枠組みを提供する研究成果です。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1073/pnas.1803415115
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/231311
Hiroaki Mizuno, Kotaro Tanaka, Sawako Yamashiro, Akihiro Narita, Naoki Watanabe (2018). Helical rotation of the diaphanous-related formin mDia1 generates actin filaments resistant to cofilin. Proceedings of the National Academy of Sciences, 115(22), E5000-E5007.