松本健 医学研究科客員研究員(大阪府済生会野江病院医長)、陳和夫 同特定教授、松田文彦 同教授らの研究グループは、滋賀県長浜市と共同で行った「ながはまコホート」事業において、睡眠呼吸障害、客観的な短時間睡眠、肥満の相互の関連性と、それらが高血圧、糖尿病に与える関連について、性差と閉経前後もふまえた 7000 人以上という世界最大規模の調査で横断的に解明しました。
本研究は、 2018 年 5 月 9 日に国際学術誌「 SLEEP 」にオンライン掲載されました。
研究者からのコメント
左から、松本客員研究員、陳特定教授、松田教授
本学と長浜市が共同して行っている「ながはまコホート」 1 万人の参加者から、世界最大規模の 7000 人の客観的な睡眠時間、睡眠呼吸障害 ( 睡眠時無呼吸 ) と肥満の相互関連と高血圧・糖尿病の関連を調べました。男性 23 %、閉経後女性 9.5% 、閉経前女性 1.5% に中等症以上の睡眠呼吸障害を認め、肥満、睡眠呼吸障害が重症化すると睡眠時間が短くなりました。肥満と睡眠時無呼吸が高血圧・糖尿病に有意に関連し、性差、閉経の有無で差がみられました。
概要
睡眠呼吸障害の大部分を占める睡眠時無呼吸は、日中の過度の眠気などで社会生活に重要な影響を与えるばかりでなく、高血圧、糖尿病、心血管障害発生とも関連するため近年多くの注目を集めています。また、短時間睡眠も 24 時間社会において増加し、日中の眠気のみならず生活習慣病との関連が注目されつつありますが、これまでの報告は客観的睡眠時間ではなく、自己申告の睡眠時間によるものがほとんどでした。さらに、肥満は生活習慣病発症予防、健康生活の最大の課題で、かつ睡眠時無呼吸の最重要要因であり、短時間睡眠とも関連するとされます。
本研究により、短時間睡眠でなく、肥満と睡眠呼吸障害が高血圧および糖尿病と関連があり、しかもその関連の度合いに性差・閉経前後で相違がみられることがわかりました。また、睡眠時間は肥満、睡眠呼吸障害が重症化すると短くなりました。各疾患の臨床治療への応用が期待される調査成果です。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1093/sleep/zsy071
Takeshi Matsumoto, Kimihiko Murase, Yasuharu Tabara, David Gozal, Dale Smith, Takuma Minami, Ryo Tachikawa, Kiminobu Tanizawa, Toru Oga, Shunsuke Nagashima, Tomoko Wakamura, Naoko Komenami, Kazuya Setoh, Takahisa Kawaguchi, Takanobu Tsutsumi, Yoshimitsu Takahashi, Takeo Nakayama, Toyohiro Hirai, Fumihiko Matsuda, Kazuo Chin (2018). Impact of sleep characteristics and obesity on diabetes and hypertension across genders and menopausal status: the Nagahama study. Sleep, 41(7):zsy071.
- 日本経済新聞(5月11日 32面)、毎日新聞(5月9日夕刊 8面)および読売新聞(5月15日 31面)に掲載されました。