白石誠司 工学研究科教授、安藤裕一郎 同特定准教授、山下尚人 修士課程学生(論文投稿当時)、小池勇人 TDK株式会社テーマリーダー、鈴木義茂 大阪大学教授らの共同研究グループは、電子のスピン機能を用いて、シリコン半導体デバイス中で発生する廃熱を電気信号として再利用することに世界で初めて成功しました。
本研究成果は、2018年5月4日に国際学術誌「Physical Review Applied」にオンライン掲載されました。
研究者からのコメント
左から、白石教授、小池テーマリーダー
こんなことができないかな、という純粋な好奇心からスタートした研究が形になり、大変うれしく思っています。産学連携研究ではありますが、こういう基礎寄りの研究もできる点に喜びを感じています。(白石教授)
当社の技術力が研究の進展に微力ながら貢献できたことを大変光栄に思います。今後、社会のみなさまに喜んでもらえるような製品をお届けするべく、より一層の努力を重ねて開発に取り組んでまいります。 (小池テーマリーダー)
概要
現在のCMOS(シーモス:相補型金属酸化膜半導体)トランジスタは、微細化の限界や膨大な発熱・廃熱による技術的限界に直面しつつあります。これらの限界を突破すると期待される新機能デバイスの1つに、スピンMOSトランジスタがあります。本研究グループは、2014年に世界に先駆けてシリコンを用いた同デバイスの室温動作に成功していました。今回、このシリコンスピンMOSトランジスタを用いて、デバイス中で発生する熱を、電子の持つスピン機能を用いる新しい手法で再利用することができました。このことは、半導体デバイスで問題となる発熱・廃熱問題を解決するための新しいテクノロジーの創出を意味し、基礎学理・産業応用の両面で極めて重要な成果です。
今回試作したシリコンスピンMOSFETデバイスの構造図
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.9.054002
Naoto Yamashita, Yuichiro Ando, Hayato Koike, Shinji Miwa, Yoshishige Suzuki, Masashi Shiraishi (2018). Thermally Generated Spin Signals in a Nondegenerate Silicon Spin Valve. Physical Review Applied, 9(5), 054002.
- 日刊工業新聞(5月4日 17面)に掲載されました。