大腸がん制御の新たなメカニズムを解明 -ゲノムの守護神p53の新調節因子を発見-

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公開日

妹尾浩 医学研究科教授、西英一郎 滋賀医科大学教授らの研究グループは、ナルディライジンというタンパク質を抑制することで、大腸がんの発症・進展が抑制されることを明らかにしました。

本研究は、2018年4月19日に国際学術誌「JCI Insight」にオンライン公開されました。

研究者からのコメント

左から、妹尾教授、西教授

本研究では、大腸がんモデルマウスを用いて、腸管上皮のナルディライジンを抑制すると大腸がん進展が抑制され、逆にナルディライジンを増やすと大腸がん進展が促進されることを示しました。また、ナルディライジンがp53の調節因子であることも初めて明らかになりました。P53は代表的ながん抑制因子のひとつであり、多くのがんにおいて重要な役割を持つことが示唆されています。さらにナルディライジンが他の種類のがん、たとえば胃がんや肝細胞がんにおいて重要な役割を果たすこともわかっています。本研究の成果を基盤とし、P53の新調節因子であるナルディライジンを標的にした新たな治療法が開発されることが期待されます。

概要

日本では、大腸がんは、女性では死亡率第1位、男性では第3位を占めており、その死亡者数はこの30年間で約3倍に増加しています。今回、本研究グループは、ナルディライジンというタンパク質を抑制することで、「ゲノムの守護神」と呼ばれるがん抑制遺伝子p53の機能が活性化され、大腸がんの発症・進展が抑制されることを、マウスの大腸がんモデルを用いて明らかにしました。さらに、ナルディライジンは、ヒト大腸がん組織において増加していることもわかり、同分子を抑制することが新たな治療法開発につながる可能性が示唆されました。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1172/jci.insight.91316

Keitaro Kanda, Jiro Sakamoto, Yoshihide Matsumoto, Kozo Ikuta, Norihiro Goto, Yusuke Morita, Mikiko Ohno, Kiyoto Nishi, Koji Eto, Yuto Kimura, Yuki Nakanishi, Kanako Ikegami, Takaaki Yoshikawa, Akihisa Fukuda, Kenji Kawada, Yoshiharu Sakai, Akihiro Ito, Minoru Yoshida, Takeshi Kimura, Tsutomu Chiba, Eiichiro Nishi and Hiroshi Seno (2018). Nardilysin controls intestinal tumorigenesis through HDAC1/p53–dependent transcriptional regulation. JCI Insight, 3(8), e91316.

  • 京都新聞(4月20日25面)、日刊工業新聞(4月20日29面)および毎日新聞(4月24日23面)に掲載されました。