前田啓一 理学研究科准教授らの国際研究グループ(アルゼンチン・ラプラタ国立大学天体物理学研究所、国立天文台、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構ほか)は、アルゼンチンのアマチュア天文家のVíctor Buso氏が観測した超新星が、ショックブレイクアウトと言われる爆発したばかりの段階であったということを、観測データの解析及びシミュレーションから明らかにしました。ショックブレイクアウトは、理論から長年予測されていたものの、継続時間が短いとされる現象のためこれまで観測で捉えられたことはなく、世界中の研究グループにより探されてきました。重い質量の星がどのように超新星爆発として爆発するのかを理解する上で、今回得られた超新星爆発の最初の瞬間の情報は大変重要な一歩です。
本研究成果は、英国の科学雑誌「Nature」(2018年2月22日号)に掲載されました。
研究者からのコメント
超新星ショックブレイクアウトはもともと1970年代に理論的に提唱された現象であり、その観測的検出が待ち望まれていました。X線及び紫外線では候補天体が2000年代に報告されていましたが、私たちに最もなじみがあり詳細な観測が可能である可視光では確実な例は見つかっていませんでした。今回の発見は、超新星の観測研究と爆発する星の構造の研究を加速させるものです。近年、毎日あるいは一日に数回、夜空の同じ場所を撮像し新天体を探索する大規模な探査観測が急激に発展しており、今後の観測例の増加が期待されています。今回、「撮像」による時間変動が決め手になりましたが、次のステップは「分光」によってその性質をより詳細に調べることになります。京都大学が岡山天体物理観測所に建設中の3.8メートル望遠鏡は2018年度に稼働予定ですが、この研究に最適な望遠鏡となります。
概要
重い質量の星がどのように超新星爆発として爆発するかを理解することは、天体物理学において重要ですが、爆発以前の星の構造が超新星爆発の性質に与える影響は明らかとなっていません。そのため、超新星爆発が生じる最初の瞬間の情報を得ることは、この問題を解明する上で極めて重要です。理論から、超新星爆発が生じる際には爆発の衝撃波が星の内部へ伝わった後に表面へ到達し、X線等の電磁放射線と可視光が生じると考えられています。この最初期の様子はショックブレイクアウトと呼ばれており、突如として起きるという予測不可能な性質と短い継続時間のために観測が難しく、近年の大型観測の努力にも関わらずこの現象を捉えられる可能性を持った決定的な観測はありませんでした。
2016年9月に、アルゼンチンのアマチュア天文家であるVíctor Buso氏がちょうこくしつ座にある渦巻銀河NGC613を観測中に、同じ銀河で超新星が発生しました。本研究グループが画像データを詳細に解析したところ、これまで知られていたどの超新星よりも急激な増光を示したことが明らかになりました。これは、まさに超新星が爆発して最初に光り輝く段階(ショックブレイクアウト)が捉えられた決定的な証拠です。本研究グループはさらに理論シミュレーションを行い、この振る舞いが自然に再現されることを示しました。
今回初めて可視光でショックブレイクアウトの決定的な検出がなされ、またその観測データが理論モデルを支持したことにより、ショックブレイクアウトを用いた超新星の研究の基礎が築かれました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/nature25151
M. C. Bersten, G. Folatelli, F. García, S. D. Van Dyk, O. G. Benvenuto, M. Orellana, V. Buso, J. L. Sánchez, M. Tanaka, K. Maeda, A. V. Filippenko, W. Zheng, T. G. Brink, S. B. Cenko, T. de Jaeger, S. Kumar, T. J. Moriya, K. Nomoto, D. A. Perley, I. Shivvers & N. Smith (2018). A surge of light at the birth of a supernova. Nature, 554(7693), 497-499.