齊藤晋 医学研究科講師らの研究グループは、親指多指症における筋肉の発達は、親指の大きさや形に関わらず、親指が生じる位置で規則的に決まることを発見しました。
本研究成果は、2017年12月29日午前6時に米形成外科学会の学術誌「Plastic and Reconstructive Surgery」に掲載されました。
研究者からのコメント
私は医学部附属病院で多指症のこどもたちの診療を担当しています。診療を重ねるうちに筋肉の発達がよい子とそうでない子がいることに気付き、たとえ豆のような多指症でも親指に機能障害がある子がいました。そこでそれを支配するメカニズムを明らかにしたいと考えておりました。本研究は筋肉の発達が親指の発生する位置で一律に決定されることを示しました。この成果をもとに今後より機能的な再建手術法の開発を進めたいと考えています。
概要
親指多指症は生まれつきの病気で、親指の隣にもう一つ親指ができる病気です。余剰な親指のできかたは様々であり、正常に近い大きさや形の親指がしっかり関節を作っている場合もあれば、豆のような小さな組織がぶらさがっているだけの場合もあります。これまで大きな親指多指症には解剖学的な問題があり、ぶらぶらした豆のような親指多指症には重要な解剖の問題はないと信じられてきました。今日、大きな親指多指症に対しては大学病院やこども病院などの専門機関で機能再建手術が行われています。しかしながらそのような治療を行っても変形や機能障害が残ることがあり、病気の全容解明が望まれていました。
本研究グループは、親指多指症の手のひらの筋肉に着目しました。筋肉の発達障害は親指の運動機能の低下や変形を生じる原因となります。筋肉はMRIなどで撮影することができますが、20分程度じっとしていないといけないため、赤ちゃんにはなかなか使えません。そこで特別に3次元超音波スキャナーを製作し、わずか15秒で親指多指症の筋肉を撮影することに成功しました。さまざまな大きさや形の親指多指症を観察した結果、筋肉の発達は、余剰な親指の大きさや形に関係なく、その親指が生じる位置によって規則的に低下することを発見しました。つまりたとえ豆のような親指であっても、発生する位置によっては機能障害が生じうることを意味します。
本成果は、これまでの親指多指症の概念を変えるものであり、治療法の発展に加えて発生のメカニズムを解き明かす上でも重要な発見です。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1097/PRS.0000000000003937
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/228917
Saito Susumu, Ueda Maho, Murata Mai, Suzuki Shigehiko.(2018). Thenar Dysplasia in Radial Polydactyly Depends on the Level of Bifurcation. Plastic and Reconstructive Surgery, 141(1), 85e–90e.
- 京都新聞(1月31日 28面)および毎日新聞(12月30日 20面)に掲載されました。