関大吉 総合生存学館博士課程学生、磯部洋明 同准教授、大辻賢一 理学研究科附属天文台研究員らの研究グループは、太陽面から大量のプラズマが噴出する現象「フィラメント噴出」の前兆を定量的に捉えることに成功しました。本研究成果により、約1時間前にプラズマ噴出の予測を行える可能性が示唆されました。
本研究成果は、2017年7月7日に米国の科学誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されました。
研究者からのコメント
今後の波及効果として、地上望遠鏡による太陽面爆発予測体制の確立が挙げられます。現在、太陽面爆発現象の予測は、主に人工衛星データに基づいて行われています。しかし、そもそも人工衛星自体が太陽面爆発の影響に脆弱であり、日本のX線観測衛星「あすか」のように太陽面爆発の影響が原因で機能が失われた人工衛星の例は数多く報告されています。このため、巨大太陽面爆発が発生し人工衛星が壊滅的状況に陥った後にも、爆発予測を行える体制を構築するためには、爆発の影響を受けない地上望遠鏡による予測体制も必要となります。今回の成果により、地上望遠鏡のみを用いて太陽面爆発(フィラメント噴出)の予測ができる可能性を示しました。今後、本成果を利用することで、 地上望遠鏡による太陽面爆発予測体制の確立 が期待できます。
概要
太陽は様々な爆発現象によってX線や極紫外線、大量のプラズマなどを宇宙空間に放出します。高度に技術が発達した現代社会では太陽面爆発の影響により、人工衛星の故障や地磁気の乱れによる大規模停電などが発生することが指摘されています。そのため爆発の発生予測は喫緊の課題として研究が進められています。
本研究グループはプラズマの動きの活発さを定量的に追跡することで、太陽面爆発の1つ「フィラメント噴出」の発生を約1時間前には予測可能であることを発見しました。また、フィラメント噴出の物理メカニズム理解にもつながる成果です。
今回の予測手法は地上に設置した望遠鏡を用いています。現在の太陽面爆発予測は大規模な爆発の際に故障する可能性が高い人工衛星データを元に予測しているため、将来の安定した爆発予測体制には不可欠である「地上望遠鏡による精緻な予測手法」の開発にも貢献できる成果です。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.3847/2041-8213/aa7559
Daikichi Seki, Kenichi Otsuji, Hiroaki Isobe, Takako T. Ishii, Takahito Sakaue, and Kumi Hirose (2017). Increase in the Amplitude of Line-of-sight Velocities of the Small-scale Motions in a Solar Filament before Eruption. The Astrophysical Journal Letters, 843(2), L24.
- 京都新聞(7月15日 29面)に掲載されました。