江口浩一 工学研究科教授らの研究グループは、株式会社ノリタケカンパニーリミテド、株式会社IHI、株式会社日本触媒、株式会社豊田自動織機、三井化学株式会社、株式会社トクヤマと共同で、アンモニアを直接燃料とした固体酸化物形燃料電池(SOFC)で、1キロワット(kW)クラスの世界最大規模の発電に成功しました。
本研究成果は、2017年7月9日から12日にチェコ共和国プラハで開催される「The 7 th World Hydrogen Technology Convention」で発表されます。
研究者からのコメント
アンモニアを燃料とするSOFCはCO 2 や有害物質の発生しない、高効率発電が可能です。この研究をとおして、アンモニアのエネルギーキャリア、燃料としての有効性を明確にしていくつもりです。
概要
アンモニア(NH 3 )はそれ自身が水素を多く含んでおり、エネルギーキャリアとして期待されています。エネルギーキャリアとは、常温常圧で気体の水素を、水素を多く含んだ化学物質に変換して、安定に貯蔵・輸送を行うための媒質です。アンモニアを燃料として発電しても水と窒素しか排出しないことから、化石燃料である炭化水素を利用した燃料電池に比較し、二酸化炭素排出量の削減効果が大きいことが期待できます。
本研究グループは、アンモニアを燃料として直接SOFCスタック(燃料電池をセパレーターと呼ばれる導電性の材料と交互に直列に連結して、電圧および出力を増加させた燃料電池の集合体。今回は30個を連結した)に供給し、1kWの発電に成功しました。これまでも小規模な発電には成功していましたが、研究開発の結果、汎用SOFCと同程度の発電出力を達成できたことで、アンモニアがSOFCの燃料として適しており、有害物質や温暖化ガスの発生を伴わない発電が実用規模まで拡大できる可能性を示すことができました。アンモニアのエネルギーキャリアおよび燃料としての利用技術の大きな進展となり、CO 2 フリー発電の実現が期待されます。
図:開発した1kW級SOFCスタックの外観
詳しい研究内容について
- アンモニアを直接燃料とした燃料電池による1キロワットの発電に成功
- 朝日新聞(8月3日 18面)および毎日新聞(7月16日 23面)に掲載されました。