大日向耕作 農学研究科准教授の研究グループは、サンスター株式会社と共同で、玄米の胚芽と表皮にあたる「米ぬか」のタンパク質を酵素で分解して得られたペプチド(アミノ酸が複数連結したもの)混合物(以下、ライスピールペプチド)の血圧降下作用を明らかにし、ライスピールペプチドに含まれる新しい血圧降下ペプチドを発見しました。
本研究成果は、2017年5月19日から21日まで開催される第71回日本栄養・食糧学会大会にて発表される予定です。
研究者からのコメント
玄米の機能性に着目し、米ぬかタンパク質の酵素処理により生成する新しい血圧降下ペプチドを発見しました。この新しいペプチドを、高血圧モデル動物に飲ませると、強い血圧降下作用を示すことから、今後の更なる応用が期待できます。
概要
古来より日本人は玄米を常食してきましたが、現代では、多くの人が玄米の胚芽と表皮にあたる米ぬかを取り除いた精米を食べています。取り除かれた米ぬかは、タンパク質やミネラルなど多種の栄養素を豊富に含むものの、食品素材として十分に活用されていません。一方、高血圧は自覚症状の無いまま脳卒中や心筋梗塞など死に直結する病気の原因となることから、「サイレントキラー」と呼ばれています。高血圧症患者は日本に4,300万人、予備軍も含めると総人口の約半分とも推定されており、その予防に効果的な食品素材の開発が期待されています。
そこで本研究グループは、ライスピールペプチドの血圧降下作用を調べ、さらにライスピールペプチドに含まれる複数種のペプチドの中から血圧降下作用のあるペプチドの探索を試みました。高血圧モデル動物として知られる高血圧自然発症ラット(SHR)にライスピールペプチドを継続的に経口投与させたところ、血圧上昇が抑制されることが明らかになりました。さらに、ライスピールペプチドに含まれる複数種類のペプチドの機能性を分析し、その中から新しい3残基ペプチド(3つの官能基(結合部位)を持つペプチド)が血圧降下作用を示すことを発見しました。この新規ペプチドは、低用量の経口投与で持続的な血圧降下作用を示すことが明らかとなりました。
詳しい研究内容について
- 米ぬか酵素処理物の血圧降下作用と新しい血圧降下ペプチドを学会発表
- 朝日新聞デジタル(4月28日)、産経ニュース(4月28日)、日本経済新聞電子版(5月8日)、YOMIURI ONLINE(4月28日)に掲載されました。