細将貴 白眉センター特定助教らの研究グループは、カタツムリ食に特化した「右利きのヘビ」として知られる特殊なヘビ類(セダカヘビ類)の一種がナメクジ食であり、カタツムリ食の近 縁種と比べて、歯数が左右同数に近いということを発見しました。
本研究成果は、2017年3月2日午後8時に「PeerJ」誌に掲載されました。
研究者からのコメント
東南アジアに十数種が知られるセダカヘビ類は、そのほとんどが右巻きのカタツムリの捕食に特殊化した結果として、左右で異なる本数の歯を進化させている、いわば「右利きのヘビ」です。しかしながら「右利き」の程度は種ごとに大きく異なっており、その違いが何を意味しているのかはこれまでわかっていませんでした。今回、「右利き」の程度がエサの違いを反映している可能性が示されたことから、セダカヘビ類における歯並びの多様性は、食の多様性の表れだと考えることができます。今後の研究により、セダカヘビ類とカタツムリ類の間の多様な関係とそれを生み出してきた進化の原理の解明が、ますます進んでいくと期待されます。
本研究成果のポイント
- ある種のヘビが、おそらくナメクジしか食べないことを発見
- カタツムリ食の近縁種と比べて、歯数が左右同数に近かった。
- 歯並びの良し悪しが、エサの種類に応じて進化することを示唆
概要
「歯の数は、左右だいたい同じである」。脊椎動物にあまねく当てはまるこの法則には、一つの例外が知られています。東南アジアに広く生息する、セダカヘビ科のヘビ類の下顎に生える歯です。左右同数ではない歯の並び(歯列非対称性)は、右巻きのカタツムリを専ら食べるという、セダカヘビ類の特異な食性に対応して進化してきました。しかし、歯列非対称性の程度は一様ではなく、種や地域ごとにずいぶんと異なっています。一種だけ知られる左右差のないセダカヘビがナメクジ食だとされていることから、歯列非対称性の違いはセダカヘビ類の中での食性の違い、特にナメクジへの依存度の違いを反映しているのではないかと予想されていました。
そこで本研究グループは、この仮説を検証するため、いずれも台湾に生息するタイワンセダカヘビ( Pareas formosensis 、以下タイワン)とタイヤルセダカヘビ( P. atayal 、以下タイヤル)の二種を対象に、エサの好みと歯列非対称性の関係を調査しました。
その結果、タイワンはナメクジばかりを食べるということがわかりました。一方でタイヤルは、これまでに調べられてきた他の多くのセダカヘビ類と同様に、カタツムリも食べるということが確認されました。また、タイワンではタイヤルに比べて歯列非対称性が小さく、左右対称に近づいていることがわかりました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 http://doi.org/10.7717/peerj.3011
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/218584
Masaki Hoso. (2017). Asymmetry of mandibular dentition is associated with dietary specialization in snail-eating snakes. PeerJ, 5:e3011.
- 朝日新聞(4月13日 25面)、毎日新聞(3月20日 29面)に掲載されました。