篠原隆司 医学研究科教授、篠原美都 同助教、田中敬 同助教らの研究グループは、精子幹細胞の自己複製を促す新しい遺伝子を発見しました。
本研究成果は、2016年8月10日に米国科学誌「Stem Cell Reports」誌に掲載されました。
研究者からのコメント
左から、篠原隆司教授、篠原美都助教
精子幹細胞の培養技術はマウス、ラット、ハムスターに限られておりその他の生物からはまだ成功していません。今回発見されたWNT5A遺伝子はヒトを含めた多くの動物種の精子幹細胞の培養に役立つ可能性があります。そのような技術はヒト男性不妊治療の開発や遺伝子改変動物作出技術の開発に貢献すると期待されます。
概要
精子幹細胞は自己複製と分化を繰り返し、個体の生涯にわたり精子を作り続けます。脳下垂体から分泌される二つの性腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン（Follicle Stimulating Hormone （FSH））と黄体形成ホルモン（Luteinizing Hormone（LH））のうち、これまではFSHが精子幹細胞の自己複製を促進すると考えられていました。
しかしFSH欠損モデルを用いた今回の研究において、FSHは精子幹細胞の自己複製に必要でなく、逆にLH欠損モデルでは精子幹細胞の増殖能力が亢進されるが明らかになりました。つまり、LH欠損モデルの精巣遺伝子発現の解析の結果、WNT5A遺伝子が精子幹細胞の自己複製を促すことを発見しました。
本研究成果のまとめ
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】
http://dx.doi.org/10.1016/j.stemcr.2016.07.005
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/216286
Takashi Tanaka, Mito Kanatsu-Shinohara, Zhenmin Lei, C.V. Rao and Takashi Shinohara. (2016). The Luteinizing Hormone-Testosterone Pathway Regulates Mouse Spermatogonial Stem Cell Self-Renewal by Suppressing WNT5A Expression in Sertoli Cells. Stem Cell Reports, 7(2), pp. 279–291.
- 京都新聞（8月19日 25面）、日刊工業新聞（8月12日 17面）に掲載されました。
