貝殻成分由来の新たな除菌剤を開発-生食用食品への殺菌法を提案-

ターゲット
公開日

西渕光昭 東南アジア研究所教授、山下泰治 株式会社かわかみ研究部課長らの研究グループは、株式会社漬新との共同研究の結果、ホタテ貝殻の高温処理で得られた焼成カルシウムを主成分とする新たな除菌剤を開発しました。

本研究成果は、2016年9月26日から開催される日本防菌防黴学会第43回年次大会において発表される予定です。

研究者からのコメント

左より西渕教授、山下課長

自然界の生物由来の物質が主成分であり、サラサラした感触でユーザーフレンドリーな除菌製剤に仕上がって気に入っています。肉などの有機物の存在により、ある程度殺菌機能が低下してきますが、次亜塩素酸ナトリウムの場合と異なり、影響はそれ程顕著ではありません( Fujimoto's modification of Kelsey - Sykes method と呼ばれる方法で調べました)。ですから、一撃必殺というよりは、少し時間はかかるけれど、無理のない利用の仕方が適しているように感じています。これも天然物由来成分の証でしょうか。食品やヒトの体内に入った場合、マイルドに機能を発揮し、役割を終えれば適時に機能が消失することは悪いことではありません。天然物を有効に利用して自然に生きることができれば、すばらしいことだと思います。

概要

食中毒原因微生物に対して、現在広く使用されている除菌剤は市販品ではハイターなどの次亜塩素酸ナトリウムとアルコールが主流です。知名度は非常に高いのですが、それぞれに弱点があることは一般にはあまり知られていません。

次亜塩素酸ナトリウムは有機物と触れると殺菌効果が大きく低下し、異臭が発生するため、レストランなどでの営業中の使用が難しいことが弱点とされています。一方、アルコールは希釈すると効果が低下するため、水分の多い食品等の殺菌消毒には適さないという弱点があります。

今回開発した除菌剤には、これらの弱点が顕著には見られないので、非加熱殺菌消毒が困難だとされている生食用の食肉や魚介類、およびワックスのきいた果実などの殺菌消毒へ応用できる可能性があります。また焼成カルシウムは長年の使用実績のある既存食品添加物として認可されていることから、食品関係の消毒殺菌に使用しても安全だと考えられます。

本除菌剤を物理的な処理法と併用することにより殺菌効果を格段に強化でき、生食用食肉中に1菌体でも検出されてはならないとされる重要な病原菌である腸管出血性大腸菌(いわゆるO157)の殺菌に役立つと考えられます。

肉塊を除菌剤の中で十分高速洗浄をすると表面に付着したO 157 は殺菌され、適度にアルカリ変性します

詳しい研究内容について

  • 京都新聞(7月12日 31面)に掲載されました。