アルツハイマー病特有のアミロイドβ立体構造に特異的な抗体の開発―より正確な診断手法への応用に期待―

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入江一浩 農学研究科教授、村上一馬 同准教授、久米利明 薬学研究科准教授、徳田隆彦 京都府立医大教授らの研究チームは、アルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβタンパク質において、神経細胞に対して毒性を持ちやすい立体構造を標的とする抗体「24B3」を開発しました。より正確かつ早期にアルツハイマー病を診断するためのツールとして活用することが期待されます。

本研究成果は、2016年7月4日に英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

研究者からのコメント

左から入江教授、村上准教授、久米准教授、徳田教授

今回開発した24B3抗体は、アルツハイマー病発症に寄与すると考えられる毒性立体構造を持つアミロイドβタンパク質に対して選択的に反応することから、アルツハイマー病診断の新しいツールになる可能性があると考えています。今後、24B3抗体が標的とするタンパク質立体構造である毒性コンホマー(毒性オリゴマー)の検出感度を上げ、脳脊髄液ではなく血液を使ったアルツハイマー病診断に応用すべく、研究を進めています。

概要

アルツハイマー病の原因物質と考えられているAβ42は、分子同士が結合(オリゴマー化)することによって神経細胞に対して毒性を示します。このことから、抗Aβオリゴマー抗体は、アルツハイマー病の診断・予防・治療において有望視されています。

特に診断に関しては、現在行われている検査手法では過剰診断されてしまう例が報告されており、より選択的に神経毒性を持つAβオリゴマーを検出する手法の開発に注目が集まっていました。

そこで、本研究グループは、アルツハイマー病の原因物質と考えられているAβ42において、神経細胞に対して毒性を持ちやすい立体構造を標的とする抗体である24B3を開発しました。

今回開発した抗体を用いてアルツハイマー病患者とアルツハイマー病ではない人の脳脊髄液を解析したところ、アルツハイマー病患者からはより多くの割合で毒性コンホマーを含むAβが確認できました。本抗体は、より正確かつ早期にアルツハイマー病を診断するためのツールとして活用することが期待されます。

図 Aβ42の毒性配座理論。毒性コンホマーからなる2、 3量体を基本単位とした毒性オリゴマー形成の推定機構を示している。毒性コンホマーは、毒性オリゴマーを形成しやすい。( Biosci. Biotechnol. Biochem. 2014 , 78 , 1293)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
http://doi.org/10.1038/srep29038

【KURENAI】
http://hdl.handle.net/2433/215876

Kazuma Murakami, Maki Tokuda, Takashi Suzuki, Yumi Irie, Mizuho Hanaki, Naotaka Izuo, Yoko Monobe, Ken-ichi Akagi, Ryotaro Ishii, Harutsugu Tatebe, Takahiko Tokuda, Masahiro Maeda, Toshiaki Kume, Takahiko Shimizu & Kazuhiro Irie. (2016). Monoclonal antibody with conformational specificity for a toxic conformer of amyloid β42 and its application toward the Alzheimer’s disease diagnosis. Scientific Reports, 6, 29038

  • 京都新聞(7月5日 29面)、毎日新聞 (7月13日 27面)、上毛新聞(WEB版)に掲載および 朝日放送で放送されました。