チップ上の微小点に保存した光の瞬時転送

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野田進 工学研究科教授、鴻池遼太郎 同博士課程学生、浅野卓 同准教授らの研究グループは、フォトニック結晶チップ上の微小点に保存した光を、「任意のタイミングで」、別の微小点に、「一方向かつ高効率に」(>90%)瞬時に転送可能な新しい光制御技術の開発に成功しました。

本成果は、5月20日付(日本時間)の米国科学誌Science系のオンラインジャーナル「Science Advances」に掲載されました。

研究者からのコメント

左から野田教授、浅野准教授、鴻池博士課程学生

本成果により、チップ上の微小点に蓄えた光を、任意のタ イミングでチップ上の別の微小点に転送出来る原理が実証できたため、将来的に、光を用いた量子情報処理デバイスや、複数光パルスのバッファリング、ルーティングといった新規光デバイスへの波及効果も期待されます。

概要

将来の量子情報等の高度な情報処理を可能とする光チップを実現するためには、光を微小点に保存するためのナノ共振器の開発、ナノ共振器に保存した光と電子系の相互作用等に基づく光量子演算ユニット等の形成、およびそれらを集積し、複数のビット間での情報転送の実現など、さまざまな課題が存在します。

これまで、本研究グループは、これらの課題を念頭に、光の波長程度の周期的屈折率分布をもつ独自のフォトニック結晶を用いて、次のような研究を進めてきました。

  1. 光を微小点に長く保存することの出来る高Q値ナノ共振器の実現
  2. ナノ共振器への光の出し入れや光メモリー動作の実現
  3. ナノ共振器の集積と強結合状態の形成

今回、上記三つの研究に続く展開として、高Q値ナノ共振器に保存した光を、制御光の照射により、別の離れたナノ共振器に、「任意のタイミングで」、 「高効率に」転送することに成功しました。

この成果は、光量子演算ユニット間の情報転送等を可能にするもので、上記の全体目標達成に向けた一歩と言えます。 また、これらを複数個集積することで、他のさまざまな機能の実現も期待されます。

図:チップ上の微小点に保存した光の瞬時転送の模式図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
http://dx.doi.org/10.1126/sciadv.1501690

【KURENAI】
http://hdl.handle.net/2433/214270


Ryotaro Konoike, Haruyuki Nakagawa, Masahiro Nakadai, Takashi Asano, Yoshinori Tanaka and Susumu Noda. (2016). On-demand transfer of trapped photons on a chip. Science Advances, Vol. 2, no. 5, e1501690.

  • 京都新聞(5月20日 25面)、日刊工業新聞(5月20日 29面)に掲載されました。