木質バイオマス中の各成分の物質量を正確に決定する手法の開発に成功 -木質バイオマスからの効率的なバイオエネルギー・製品原料の獲得にはずみ-

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公開日

片平正人 エネルギー理工学研究所教授、岡村英保 同博士研究員、渡辺隆司 生存圏研究所教授、木川隆則 博士(理化学研究所)らのグループの共同研究で、多成分系である木質バイオマス中のさまざまな成分の物質量を正確に決定するオールマイティな手法(TAF(tolerant of any factors)法)を世界で初めて開発することに成功しました。

本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」誌(電子版)に掲載されました。

研究者からのコメント

片平教授

各成分の物質量を正確に決定することができる本手法の開発は、多成分系である木質バイオマスからバイオエネルギーや各種製品の原料を効率的に獲得する工程を確立するのに役立ちます。さらに本手法は、生命科学分野における物質量の決定にも有効です。溶液中の物質量を正確に決定することができる本手法は、物理・化学・生物における基幹技術となると考えられます。

概要

木質バイオマスは化石資源の代替資源として期待されており、バイオエネルギーや各種製品の原料をここから獲得する工程が精力的に研究されています。木質バイオマスは多成分からなり、各成分の分子量や化学構造は多岐にわたります。上記の工程を確立するためには、各成分の物質量を把握することが欠かせません。しかしこれまでは、木質バイオマス中の各成分の物質量を正確に決定することはできず、木質バイオマスを利活用する工程を確立する上での障害となっていました。

本研究グループはNMR(核磁気共鳴)法を用いることで、木質バイオマス中のさまざまな成分の物質量を正確に決定する手法(TAF(tolerant of any factors)法)を世界で初めて開発することに成功しました。これによって、木質バイオマスからバイオエネルギーや各種製品の原料を獲得する工程の確立が促進されることが期待されます。

溶液中の各成分の物質量を正確に決定する手法の開発. (左)リグニン2量体(分子量320)とカードラン(分子量81000)が当量溶解した溶液に関し、HSQC法のピーク強度から物質量を決定すると、分子量が大きいカードランの物質量が低く見積もられてしまいます. (右)ピーク強度の歪み(α 2 )をTROSY法によって見積もり、α 2 を用いた較正を施した上で物質量を決定すると、両成分の物質量は同じとなり、物質量が正しく決定される事が示されました.

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/srep21742
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/204604

Hideyasu Okamura, Hiroshi Nishimura, Takashi Nagata, Takanori Kigawa, Takashi Watanabe & Masato Katahira
"Accurate and molecular-sizetolerant NMR quantitation of diverse components in solution"
Scientific Reports 6, Article number: 21742 Published: 17 February 2016