荻原祐二 教育学研究科研究員、内田由紀子 こころの未来研究センター特定准教授らの研究グループは、新生児の名前の経時的な変化を分析することによって、日本文化は個性をより重視する個人主義文化に徐々に変容しつつあることが実証的に示されました。
本研究成果は、スイス心理学系のジャーナル「Frontiers in Psychology」の電子版で公開されました。
研究者からのコメント
新生児の名前の経時的な変化という、学術的だけでなく社会的にも注目を集めている現象を扱いましたので、どなたでも読んでいただけるオープンアクセス誌に投稿しました。また、紙面の都合上こちらでは報告しきれていないデータやその分析も論文に掲載しております。ぜひ論文の方にも目を通していただけますと非常に幸いです。
今後は、なぜ個性的な名前を与えようとする傾向が増加しているのか、そして個性的な名前を与えられることが変容する社会の中でどのような帰結を生み出しているのかなどを検討したいと考えています。
概要
近年の日本では、個人としての独立や自立、他者と違って個性的であることなどが重視され、個人主義化が進んでいるとされています。実際、家族サイズの減少や離婚率の増加などから、日本文化の個人主義化が指摘されています。本研究では、新生児の名前を用いて、日本文化が個人主義化しているかどうか検討しました。
ベネッセコーポレーションと明治安田生命保険が公開している新生児の名前ランキングを分析しました。具体的には、2004年から2013年における、人気のある名前の読みと漢字が与えられる割合の推移を算出しました。その結果、人気のある漢字を与えられる割合は増加していましたが、人気のある名前の読みを与えられる割合は減少していました。さらに、人気のある漢字の組み合わせの読みの種類数を分析したところ、その数は経時的に増加していました。
これらの結果から、人気のある漢字に対して一般的でない読みを与えることで、個性的な名前を与える傾向が増加していると考えられます。よって、日本文化は個性をより重視する個人主義文化に徐々に変容しつつあることが実証的に示されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.3389/fpsyg.2015.01490
[KURENAI] http://hdl.handle.net/2433/210502
Yuji Ogihara, Hiroyo Fujita, Hitoshi Tominaga, Sho Ishigaki, Takuya Kashimoto, Ayano Takahashi, Kyoko Toyohara and Yukiko Uchida
"Are common names becoming less common? The rise in uniqueness and individualism in Japan"
Frontiers in Psychology, Volume 6 Article 1490 Published: 21 October 2015
- 朝日新聞(10月22日 34面)、京都新聞(10月22日 25面)、日本経済新聞(10月22日夕刊 14面)、毎日新聞(10月24日 27面)および読売新聞(10月22日夕刊 10面)に掲載されました。