ビタミンAを貯蔵する肝星細胞が肝臓の炎症を制御していた -肝炎、肝硬変、肝癌の予防や治療法開発に期待-

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公開日

藤田伴子 医学研究科特定准教授、成宮周 同特定教授らの研究グループは、肝炎で観察される炎症性免疫反応に、肝臓に5%の比率で存在することが知られる肝星細胞に発現する分子が重要であることを発見しました。

本研究成果は、2015年8月6日に米国科学雑誌「Hepatology」の電子版で公開されました。

研究者からのコメント

肝星細胞が、肝臓での炎症に対してさまざまなメカニズムを介して関与する可能性が示唆されたことから、今後は、肝炎をおこす物質を実験動物に長期間投与するようなヒト慢性肝炎を模倣するモデルや、肝血流の障害による肝炎の疾患モデルを用いて、同細胞の役割を解明していく予定です。

概要

肝星細胞は、ビタミンAの貯蔵や慢性肝炎後の肝硬変の発症に関与することが知られていましたが、肝炎における炎症自体への関与についてはこれまで詳細な報告がなされていませんでした。本研究では、同細胞が細胞表面に発現するプロスタグランジンD2受容体の一つであるDP1を刺激することで、急性肝炎の動物モデルにおける病態が有意に改善することを明らかにし、肝星細胞が、肝臓の炎症反応を直接的に調節することによって肝炎の程度を規定するという新たな機能を有することを示しました。

肝炎は、肝硬変や肝がんへの進行が医療上の大きな問題となっています。本研究成果により、肝炎をはじめとする肝臓の炎症性疾患に対して、肝星細胞を標的とする新規の治療法開発が期待されます。

肝星細胞による肝炎の制御メカニズム

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1002/hep.28112

Tomoko Fujita, Kitipong Soontrapa, Yoshiya Ito, Keiko Iwaisako,
Catharina Sagita Moniaga, Masataka Asagiri, Masataka Majima and Shuh
Narumiya
"Hepatic stellate cells relay inflammation signaling from sinusoids to
parenchyma in mouse models of immune-mediated hepatitis"
Hepatology, Article first published online : 30 SEP 2015