飼育シマウマの遺伝的多様性の解明

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伊藤英之 野生動物研究センター博士後期課程学生と村山美穂 同教授は、ターニャ・ランゲンホルスト 博士(英国マーヴェル動物園)、ロブ・オグデン 博士(スコットランド王立動物園協会)との共同研究を行い、絶滅危惧種のグレビーシマウマなどシマウマ3種について、日本と英国の飼育個体の遺伝的多様性を解析しました。結果、新規開発したマーカーを用いて、種の特定、雑種個体の特定など、飼育管理に必要な情報を得られることがわかりました。

本研究成果は、8月21日付けにて、英国科学誌「Scientific Reports」誌に掲載されました。

研究者からのコメント


京都市動物園をはじめ、多くの動物園のご協力で成果を出すことができ、感謝しています。繁殖の際に今回の成果を活用すれば、できるだけ遺伝的背景の異なる相手を選ぶことができ、近親交配による遺伝病などのリスクも減らすことができます。今後は飼育個体群の未解析個体について解析を進めるとともに、繁殖能力や疾患に関連する遺伝子についても解析を進めたいと考えています。

概要

シマウマはウマ科に属し、グレビーシマウマ、サバンナシマウマ、ヤマシマウマの3種があります。グレビーシマウマとヤマシマウマは絶滅の恐れのある種としてIUCNレッドデータリストに記載されています。また、野生下でグレビーシマウマとサバンナシマウマの雑種が報告されており、保全のためにシマウマの種内・種間の遺伝的管理が必要となっています。

本研究グループはグレビーシマウマから28のマイクロサテライトマーカーを開発し、シマウマ3種、計123個体の遺伝的多様性について解析しました。解析結果からグレビーシマウマの遺伝的多様性はサバンナシマウマよりも低いことが示唆され、またこれらのマーカーを用いることによりシマウマの個体特定・種の特定、雑種個体の特定など、飼育管理に必要な情報を得られることがわかりました。

本研究は、グレビーシマウマの種別調整園である京都市動物園およびヨーロッパ種別調整者と共同で、シマウマ飼育園(日本17園、英国5園)の協力により行いました。

グレビーシマウマ、グラントシマウマ(サバンナシマウマの亜種)、および雑種の遺伝構造

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/srep13171

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/199882

Hideyuki Ito, Tanya Langenhorst, Rob Ogden & Miho Inoue-Murayama
"Population genetic diversity and hybrid detection in captive zebras"
Scientific Reports 5, Article number: 13171 Published online: 21 August 2015

  • 京都新聞(9月3日夕刊 1面)に掲載されました。