平 明日香 医学研究科博士課程学生、高田穣 同教授らの研究グループは、小児遺伝性疾患「ファンコニ貧血」(FA)の病態の解明や新規原因遺伝子の発見、同定を目指しており、今回、ファンコニ貧血に関連したキー分子であるUBE2Tがこの疾患の新規原因遺伝子であることを発見しました。
本研究成果は、6月5日午前1時(日本時間)に「The American Journal of Human Genetics」誌に掲載されました。
研究者からのコメント
ファンコニ貧血遺伝子発見を目指してきましたが、やっと一つみつかりました。新しい遺伝子の発見で世界の見え方が違ってきます。まだまだ解析不十分な症例がありますから、もっと見つかることを期待して研究を続けます。
概要
ファンコニ貧血(Fanconi anaemia ; FA)は先天性骨髄不全症候群の一つで、1927年、スイスの小児科医Guido Fanconiによって報告された劣性の小児遺伝性疾患です。人種間ではとくにユダヤ人(Ashkenazi Jews)に多く、本邦での発症は正確には不明ですが、年間10人前後と推定されます。本症では、染色体の不安定性を背景に、進行性の骨髄不全、急性骨髄性白血病や固形腫瘍の合併、先天奇形や不妊などの臨床症状が引き起こされます。
今回、全エキソームシークエンスやCGH(Comparative Genomic Hybridization)といった手法を組み合わせて、網羅的に原因遺伝子を検索したところ、UBE2Tの変異のある日本人患者2名を見出し、患者細胞を用いて詳細な解析を行い、本疾患の原因遺伝子であることを明らかにしました。世界的には17個の原因遺伝子が同定されており、18個目の遺伝子としての報告です。アジアから、また日本人からの発見と同定は初めてです。
UBE2T遺伝子の染色体上の位置と2名の変異のまとめ
※ 本研究は、矢部みはる 東海大学附属病院准教授、矢部普正 同准教授、吉田健一 医学研究科助教、小川誠司 同教授、佐藤浩一 早稲田大学先進理工学部助教、胡桃坂仁志 同教授、小島勢二 名古屋大学医学部附属病院教授、伊藤悦朗 弘前大学医学部附属病院教授、嶋本顕 広島大学医歯薬保健学研究院准教授をはじめ、多くの方々との共同研究で行われました。
詳しい研究内容について
小児の遺伝性疾患「ファンコニ貧血」新規原因遺伝子FANCTの同定 -新規原因遺伝子として本邦から初めての報告-
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1016/j.ajhg.2015.04.022
Asuka Hira, Kenichi Yoshida, Koichi Sato, Yusuke Okuno, Yuichi Shiraishi, Kenichi Chiba, Hiroko Tanaka, Satoru Miyano, Akira Shimamoto, Hidetoshi Tahara, Etsuro Ito, Seiji Kojima, Hitoshi Kurumizaka, Seishi Ogawa, Minoru Takata, Hiromasa Yabe, Miharu Yabe
"Mutations in the Gene Encoding the E2 Conjugating Enzyme UBE2T Cause Fanconi Anemia"
The American Journal of Human Genetics Volume 96 Issue 6 Pages 1001–1007, 4 June 2015
- 京都新聞(6月5日 23面)に掲載されました。