すばる望遠鏡で迫るスーパーフレア星の正体 ~巨大な黒点を持つ星だった~

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公開日

野津湧太 理学研究科博士前期課程学生、野上大作 同准教授、柴田一成 同教授(同附属天文台長)らの研究グループの観測結果から、ケプラー衛星でスーパーフレアの見つかった太陽型星のうち50星について、すばる望遠鏡を用いた「分光観測」を行い、その波長スペクトルの詳細な分析を行った結果、太陽とよく似た星であっても巨大黒点が生じれば、スーパーフレアが起こりうることが分かりました。

本研究成果は、日本天文学会欧文研究報告(PASJ)の67巻第3号(2015年6月25日発行予定)に掲載されることになりました。

研究者からのコメント

柴田教授、野上准教授、野津博士前期課程学生

今後は引き続きすばる望遠鏡での観測を続けるとともに、京都大学を中心に現在建設を進めている京都大学岡山3.8m望遠鏡も使って、さらに詳細にスーパーフレア星の性質や長期的な活動性の変化を調査し、巨大なフレアが起こる条件や兆候について調べる予定です。

概要

太陽フレアは、太陽の表面の黒点に蓄えられた磁場のエネルギーが一気に放出される爆発現象です。過去には通信障害や大規模停電などの被害へ繋がった事例が報告されています。

これまで本研究グループでは、太陽系外惑星探査衛星「ケプラー」の観測データを解析することにより、太陽型星でスーパーフレア(最大級の太陽フレアの10倍~1万倍の超巨大フレア)を多数(数百例以上)発見してきました(前原他Nature誌2012年5月24日号)。この発見は、スーパーフレアの統計的研究が史上初めて可能になるなど、非常に重要な発見となりましたが、スーパーフレアを起こした星の、より詳しい正体に迫るには、さらに詳しい観測が必要でした。

そこで今回、ケプラー衛星でスーパーフレアの見つかった太陽型星のうち50星について、すばる望遠鏡を用いた「分光観測」を行い、その波長スペクトルの詳細な分析を行いました。その結果、太陽とよく似た星であっても巨大黒点が生じれば、スーパーフレアが起こりうるという描像を提起していることが分かりました。


(左) 可視光とCa II線で見た太陽の観測画像(Big Bear Solar Observatoryによる観測データ)とスーパーフレア星を可視光とCa II線で見た場合の想像図。大きな黒点の周囲は、Ca II線で見ると明るくなっています。(右)電離カルシウム(Ca II 854.2[nm])の吸収線。スーパーフレア星(上のスペクトル)は、太陽(下のスペクトル)と比較して、中心部分が浅く(明るく)なっており、巨大黒点の存在が示唆されます。

詳しい研究内容について

すばる望遠鏡で迫るスーパーフレア星の正体 ~巨大な黒点を持つ星だった~

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1093/pasj/psv001

Yuta Notsu, Satoshi Honda, Hiroyuki Maehara, Shota Notsu, Takuya
Shibayama, Daisaku Nogami and Kazunari Shibata
"High-dispersion spectroscopy of solar-type superflare stars. I.
Temperature, surface gravity, metallicity, and vsin i"
Publications of the Astronomical Society of Japan published February 22,
2015

[DOI] http://dx.doi.org/10.1093/pasj/psv002

Yuta Notsu, Satoshi Honda, Hiroyuki Maehara, Shota Notsu, Takuya
Shibayama, Daisaku Nogami and Kazunari Shibata
"High dispersion spectroscopy of solar-type superflare stars. II.
Stellar rotation, starspots, and chromospheric activities"
Publications of the Astronomical Society of Japan published March 29, 2015

  • 日本経済新聞(6月1日 13面)および読売新聞(8月10日 16面)に掲載されました。