本庶佑 医学研究科客員教授、Nasim Begum 同准教授らの研究グループは、AIDはRNA編集か、DNA編集を行なうのかが長らく議論されていましたが、本研究により、RNA編集を示す決定的な証拠を得ました。これは、2000年に本庶客員教授らが発見したAIDによる免疫グロブリン遺伝子組換えメカニズムに関する長年の論争に結着をつける発見です。
概要
AIDとよく似たRNA編集酵素であるAPOBEC1は、共役因子ACFを必須とします。
そこで本研究グループは、ACFと類似のRNA結合タンパク群の中からAIDに必要な分子を探したところ、hnRNP LとhnRNP Kを同定しました。hnRNP KはDNA切断に関わり、体細胞突然変異に必須です。しかし、hnRNP LはDNA切断後の修復に関わり、クラススイッチに必須ですが、体細胞突然変異には関与しません。この両者はRNAを結合する能力を持っています。
一方で、両者のRNA結合能力を破壊する変異体を作ると、体細胞突然変異やクラススイッチが失われることから、AIDがRNAを介してクラススイッチおよび体細胞突然変異を行なっていることが確証されました。
図:AIDはhnRNP KとhnRNP Lを共役因子とするRNA編集酵素
詳しい研究内容について
RNA結合タンパク質hnRNP KとhnRNP LがAIDによる DNA切断と遺伝子組換えに必須の共役因子であることを発見
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1506167112
Wenjun Hu, Nasim A. Begum, Samiran Mondal, Andre Stanlie, and Tasuku Honjo
"Identification of DNA cleavage- and recombination-specific hnRNP cofactors for activation-induced cytidine deaminase"
PNAS published ahead of print April 20, 2015
掲載情報
- 京都新聞(4月21日 25面)および日本経済新聞(4月28日 15面)に掲載されました。