黒田知宏 医学部附属病院教授(医療情報企画部)は、京都高度技術研究所(ASTEM)、帝人グループの株式会社帝健との共同研究で、平成26年度医工連携事業化推進事業(総合特区推進調整費)の支援を受け、西陣織の技術を用いた12誘導心電計測布を開発しました。
本研究成果は、4月11日(土曜日)から京都国際会館で行われる、日本医学会総会2015 関西学術講演内の「経済産業省・近畿経済産業局 医工連携施策成果ブース」および学術展示の帝人グループのブースで展示される予定です。
研究者からのコメント
スマートテキスタイルやEテキスタイルと呼ばれる電子機器の機能を持った布の開発研究は、情報化によって家庭に医療が広がっていくために必要な、着て歩けるウェアラブルセンサーや、生活空間の中に埋め込まれるユビキタスセンサーを実現するための基礎として重要な研究です。本研究では、心電信号取得用のテキスタイル開発をきっかけにして、スマートテキスタイルの工業的な試作と大量生産が可能な製造プラットフォームを整えようとするものです。私たちは、西陣織というスマートテキスタイル製造プラットフォームに最適な技術を得て、京都を情報産業の製造拠点とすることを目指します。
概要
心臓疾患は日本の死因の第二位を占め、その中でも、急性虚血性疾患は発症後2時間以内に所謂バルーン療法(PCI)措置を執らなければ、大幅に救命率が下がる疾患です。したがって、救急搬送をする前に、まず12誘導心電図という精密な心電計測を行って、虚血性心疾患であることを早く把握することが必要です。しかし、12誘導心電は電極10個を正しい位置に取り付けないと計測出来ないため、なかなか救急現場に普及していませんでした。
そこで本研究では、12誘導心電計測に必要な10個の電極(の内の8個)を配置した帯状の布を開発しました。これを正中線と腋の下の二つの目印に合わせて、胸の周りにぐるっと巻くだけで簡単に正しく電極を取り付けて、簡単に12誘導心電図を計測することができます。
本研究で開発した布は、西陣織の技術を用いて作られています。西陣織では複雑な模様の電気回路を一本の繋がった糸で織り出せますので、心電などの生体電気信号を計測するのに適したe-Textile(電気回路の入った布)を工業的に生産することが可能です。したがって、高品質な心電計測布を、安く安定して製造することが出来ます。帝人グループでは、本研究の成果を受けて、年内にも救急用12誘導心電布を商品化する計画です。
計測テストの様子
詳しい研究内容について
掲載情報
- 京都新聞(4月7日 25面)、日刊工業新聞(4月10日 11面)および日本経済新聞(4月7日 13面、2016年5月4日 7面)に掲載されました。