2014年8月6日
阿部修士 こころの未来研究センター特定准教授らの研究グループは、機能的磁気共鳴画像法と呼ばれる脳活動を間接的に測定する方法と、嘘をつく割合を測定する心理学的な課題を使って、正直さ・不正直さの個人差に関係する脳の仕組みについて解明しました。
本研究成果は、米国科学雑誌「Journal of Neuroscience」誌の電子版にて公開されることになりました。
研究者からのコメント
人生の中で嘘をついてしまうことは、誰しもが経験することです。
今回の研究では脳の側坐核のはたらきと、正直さの個人差が密接に関連していることが明らかとなりました。
ただし、側坐核の活動が高いからといって、その人は嘘つきである、と判断することはできません。また、今回の研究から、正直さ・不正直さの個人差の原因の全てが解明されたわけではありません。今後の研究を通じて、人間が嘘をつく生物学的なメカニズムをさらに追及していきたいと考えています。
概要
世の中には正直者と嘘つきがいますが、どうしてそのような個人差があるのかはわかっていません。
今回の研究では、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)と呼ばれる脳活動を間接的に測定する方法と、嘘をつく割合を測定する心理学的な課題を使って、正直さ・不正直さの個人差に関係する脳の仕組みを調べました。
その結果、報酬(今回の研究ではお金)を期待する際の「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる脳領域の活動が高い人ほど、嘘をつく割合が高いことがわかりました(図)。さらに、側坐核の活動が高い人ほど、嘘をつかずに正直な振る舞いをする際に、「背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)」と呼ばれる領域の活動が高いこともわかりました。
今回の研究は、側坐核の活動の個人差によって、人間の正直さ・不正直さがある程度決まることを示した、世界的にも初の知見です。
図:報酬期待に関わる側坐核の反応と、嘘をつく割合との正の相関(論文中のFigure2を改変)
詳しい研究内容について
どうして正直者と嘘つきがいるのか? -脳活動からその原因を解明-
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1523/JNEUROSCI.0217-14.2014
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/189384
Nobuhito Abe and Joshua D. Greene
"Response to Anticipated Reward in the Nucleus Accumbens Predicts Behavior in an Independent Test of Honesty"
The Journal of Neuroscience, 34(32): 10564-10572, 6 August 2014
掲載情報
- 日本経済新聞(8月6日夕刊 14面)に掲載されました。