明和政子 教育学研究科教授は、COI拠点においてユニ・チャーム株式会社と共同で、新機能を搭載したトイレトレーニング専用紙オムツ「新トレパンマン」を開発しました。これまでのトイレトレーニングは失敗する経験、嫌な思いを子どもに経験させることで(負の強化子)トイレに導く、という方法が一般的でした。しかし、今回新たに開発した「新トレパンマン」は、従来の発想とはまったく異なるものです。オムツを介して親子がともに楽しいと感じながらコミュニケーションし、その過程で子どもが進んでトイレに行きたくなる気持ちを高める仕掛け(正の強化子)を搭載しました。
実際、「新トレパンマン」を使用したグループと普段使用している紙オムツを使い続けたグループで2か月にわたりトレーニング効果を比較した結果、「新トレパンマン」を使用した子どもは、使用直後から「トイレでおしっこが成功する」 行動が継続的に促進されました。親の心的変化についても、「新トレパンマン」を使用したグループでは、もう一方のグループに比べて「トレーニングをやめたい」というネガティブな感情が抑制され、「トレーニングをしていて嬉しい」といったポジティブな感情が高まることが明らかとなりました。
「新トレパンマン」の3つの機能
- オムツを媒介として親子のコミュニケーションを促進する「おなじえさがし」
- 子どもにオムツへの強い愛着を抱かせる「わくわくおえかき」
- 子どもに達成感を効果的に感じさせ、親子ともに喜びを共有できる「ごほうびシール」
波及効果
「新トレパンマン」により、親子がストレスを過度にため込むことなく、前向きな気持ちでトイレトレーニングを行うことが期待されます。現代社会では核家族化が進み、母親がひとりで育児のすべてを背負う「孤立育児」が一般化しています。しかし生物学的観点からみると、ヒトは進化の過程で「共同養育」を基本とする育児により連綿と命をつないできたと考えられるのです。共同養育が叶わなくなっている現代社会の子育てにおいて、本製品が共同養育の一助として機能する研究、製品開発を目指しています。
今後の予定
今回得られた研究結果は、2018年3月23日から始まる日本発達心理学会第29回大会にて発表します。また、さらなる機能向上を図るべく、子育てにまつわる心的側面の課題を把握し、その支援に向けた基礎研究と科学的エビデンスにもとづく真に有効な製品開発を行っていきます。