京大の「実は!」Vol.34 「京大病院の最新医療の実は!」

「ハイブリッド三部作」。

何やら映画の劇場三部作的なこの名称・・・。

実は、これ、 京都大学医学部附属病院 (以下、京大病院)が誇る最先端医療装置(システム)の呼び名です。

痛みが軽減されたり、手術痕が目立たなくなったり、小型化して移動がスムーズになったり、最近の医療技術の進歩は実にめざましいもの。

京大病院も、そんな最先端医療を誇る病院の一つです。

今回の「京大の実は!」では、そのうわさの最新医療装置(システム)「ハイブリッド三部作」を、広報Bが徹底レポートします!

一般の方に向けて、開かれた病院を目指して行われるイベント「京都大学オープンホスピタル」も合わせてレポートしますよ~!

「京都大学医学部附属病院」ってどんなところ?

京大病院は、1899年(明治32年)に京都帝国大学医科大学附属医院として開設されました。高度先進医療を行う総合病院であり、特定機能病院として全職員が、患者の権利を守り、より安全な医療をめざしています。

京大病院の基本理念は以下の三つ。この理念を掲げ、病院関係者一同が、日々医療と向き合っています。

【京大病院の基本理念】

  1. 患者中心の開かれた病院として、安全で質の高い医療を提供する。
  2. 新しい医療の開発と実践を通して、社会に貢献する。
  3. 専門家としての責任と使命を自覚し、人間性豊かな医療人を育成する。

京大病院が誇る、最新医療装置(システム)「ハイブリッド三部作」に迫る!

うわさの「ハイブリッド三部作」は、以下三つの最新医療装置(システム)の総称です。

「ハイブリッド三部作」の生みの親に聞きました!

今回は、荒川芳輝 医学研究科脳神経外科学助教、角山正博 医学部附属病院手術部副部長にお話を聞きました。

左から、角山副部長、荒川助教。荒川助教の年間⼿術数は約100件弱。
難しい脳の⼿術を、およそ週に2回は⾏っていることになります・・・。

Q. 「ハイブリッド三部作」制作にいたるまでの経緯をおしえてください!

荒川 : 医療現場での必要性から浮上した企画であったことと、手術部ができて20年たち、何か新しい取り組みをしようということから始動しました。

まず2011年に、四つの科(心臓外科、耳鼻科、整形外科、脳外科)が集まって相談するところからスタート。それぞれの科ごとに要望もバラバラなので、それをまとめるところからでしたが、それも結構大変で・・・。その後、さらに呼吸器科、循環器科も加わり、打ち合わせを重ねて方向性を定めていきました。

当時の三嶋理晃 病院長からは、まず下記の三つを条件として掲示されていました。

  • 患者さんの治療のため
  • 病院の付加価値を生む新しい医療の研究開発であること
  • 若い世代の教育に繋がること(研修医など)

それをすべて叶えるもの、という視点で詰めていき、最終OKが出されてから三カ年計画でスタートしました。

広報B : 複数の科がまたがっての取り組みは、従来から行われていたのですか?

荒川 : いえ、今回のような複数科がまたがってタッグを組んだ取り組みは初めて。まさに、各科の協力で実現した一大プロジェクトです。京大にとっても、かなり賭けに近い取り組みだったんです。

Q. 「ハイブリッド三部作」について、それぞれ詳しくおしえてください!

「次世代型ハイブリッド手術室システム」

角山 : まず最初に、2013年11月から「次世代型ハイブリッド手術室システム」稼働がスタートしました。ハイブリッド手術室とは、カテーテルを用いた血管内治療と外科手術を同時に行える手術室のことで、手術台と血管造影撮影装置を組み合わせたものです。

これにより、外科手術で最小限に切開後、患者さんの体に負担の少ないカテーテル治療ができ、カテーテルだけでは治療できない疾患にも外科手術が行えることから、全国の病院で導入されています。京大病院では、この従来型のハイブリッド手術室に最新鋭の画像システムを搭載した「次世代型ハイブリッド手術室システム」を導入し、稼働を始めました。

ナビゲーションシステム、血管撮影装置、手術台、高機能PACSビューアー、画像サーバーをネットワークで連動した国内初の手術システム

広報B : 従来のハイブリッド手術室との大きな違いはどういう点でしょうか?

荒川 : 主な特徴は「血管造影撮影装置」です。ロボットアーム技術に着想を得て開発された高機能血管造影撮影装置。ガンダムみたいでしょ(笑)?

血管や臓器の画像をあらゆる角度から3次元撮影して、それらを瞬時に解析・立体化して大型ディスプレイに表示します。それにより、従来は見えなかった部分も可視化され、手術前との比較や治療が必要な部分の特定ができて、より正確な手術の方針決定が可能になりますし、手術の安全性が格段に向上します!

広報B :なるほど~。患者さんの体位を変えずに、いろんな角度から撮影可能になるんですね。

広報Bが見学した時は心臓のカテーテル手術を実施中。これまでのイメージとは違う明るい手術室。看護師さんの手術着もカワイイ!

細い血管一本一本まで映し出しています。ここまで細部を鮮明に映し出せる装置は他にないとか。

「ハイブリッドMR手術室」

荒川 :そして2014年10月から、3ルーム構成の「ハイブリッドMR手術室」が稼働しました。

MRI準備室を備えた「前室」「手術室」「MRI検査室」の三つの空間を備えた三ルーム構成となっていて、「手術室」「MRI検査室」の間に通路を設ける等安全性にも徹底して設計しました。

明るく開放的な手術室。検査室の床面はフローリングにするなど、患者さんがリラックスできる空間づくりにもこだわりが。

広報B :なんだか、通常の手術室のイメージと違って開放的ですね!特徴はどんなところですか?

荒川 : 本手術システムの特徴は、高磁場3テスラMRI装置を手術エリアに設置し、術前・術中・術後のMRI撮影を迅速に行い、正確な手術の支援ができることです。連動する最新のナビゲーションは、術中のMRI画像を3次元構成し、リアルタイムに標的臓器を立体的に把握することが可能です。さらに、高磁場で可能となる脳機能画像(脳機能マッピング)・MRスペクトロスコピー(生体内分子解析)・トラクトグラフィ(神経線維画像)といった最新の撮像法を用いた手術を今後予定しています。

従来の平均的な磁場は0.4ステラ。3ステラを手術室内に導入したのは日本初。これは磁場の問題で超難関だそうです!

奥に見える黒い穴は、脳機能画像を映し出せる脳機能マッピング。

脳機能マッピングは、外から見るとこんな感じ。左写真の黒い穴がコレなんですね。

フタを開けると、こんな感じ。ここから、脳の投影をします。ちなみに、稼働時はこの辺りの磁場も強力だそう。カメラを持ってたらあっという間に壊れてしまうほど。

通常の手術室。手術中は、「蛍光手術」といってLEDライトをつけた状態で行います。

通常は、この青色LEDですが・・・

実は赤色と緑色バージョンも。理由は、セットでついてきたから(笑)。通常は使うことはありません。赤色LEDの部屋で手術って、なんだか緊張しそう・・・。

広報B :ところで先生。MRIって一般的には下層階にあることが多いような気がしますが・・・。今回みたいに四階に設置されるのは珍しいですよね?

荒川 : そのとおり! 一般のMRI検査で使われるものと同様の高磁場3T機を高層階の手術室に組み入れたのは、京大病院が国内で初めてなんです。

「病院が傾く!?」 まさかの構造上の大きな壁・・・

荒川 : 実は、MRIは7トンもの重量のある機械なんですよ。建物の構造上の問題から、通常はどこの病院でも、地下か1階に作られることがほとんど。

それを4階に作る! となったので、当然ながら、構造上クリアせねばならぬ難題にぶつかりました・・・。

基盤を固める工事も大変でしたが、MRIを室内に搬入するのも大変で。壁面に穴を開けて、壁を壊してぶち抜き、大型クレーンで搬入しました。まるでUFOキャッチャー(笑)。搬入の時も、わずかにずれたら壁にぶつかってしまう! と冷や冷やものだったそうです。

また、MRIはドイツで製造し、出荷する時からON状態を維持したまま慎重に搬入せねばならないため、それも大変でした。

広報B : まさに産地直送ですね!

荒川 : 冗談抜きで、「病院が傾く!」と言われるほどの大工事でした。なので、なかなか導入できる病院も少ないのでしょうね・・・(笑)。

「移動型術中CT」

角山 : さらに、2015年4月から、三部作の完結となる国産「移動型術中CT」が稼働しました。

従来のCTと異なり、CT装置を患者さんの手術部位に移動させて撮影を行うため、あらゆる手術状況に応じた撮像が可能です。院内のPACS画像サーバー、 ナビゲーションと連動するシステムを持つことで撮影した画像を瞬時にナビゲーションに送信し、手術支援を行うことが可能です。

一般的なCTの重量の5分の1というコンパクトさ

角山 : 「国産」というのが、実はポイント。この、アーム型X線CT 診断装置 3D Accuitomo M(モリタ製作所)は、容易な移動と高画質CT撮像を目的に、国内で初めて開発された装置です。

三部作のうち、これが唯一、開発段階からのスタートだったものです。開発にあたっては、画像のゆらぎや解像度など、数々の困難がありました。とにかく難しい試みだったため、国内での生産が不可能な場合は輸入するつもりだったのですが、モリタ製作所が苦心のうえ、実現してくれました。

広報B : こんなに小さいんですか!

角山 : 一般的なCTは重量が約2トンありますが、この装置は5分の1で約400kg。軽量でありながらも強度のある素材を実現するため、素材は飛行機のボディのカーボンを使用するなど、徹底的にこだわっています。

広報B : いやあ、知らなかった・・・。医療技術はここまで進化しているんですね! とっても心強いです!

荒川先生、角山先生、最後にひとことお願いします。

荒川 : 京大病院では、最先端でより安全な医療技術を患者さんに提供できるように取り組んでいます。また、患者さんのために頑張れる技量の高い医師の育成にも力を入れています。皆さんのご支援を宜しくお願いします!

角山 : 京大病院では、最新の技術とチームプレーによって、より安全に高度な手術を患者さんに提供することを目指しています!

「京大病院オープンホスピタル」に潜入!

最新の医療技術以外にも、京大病院の魅力はまだまだあります。それが一挙大公開されるのが、「京大病院オープンホスピタル」です。

京大病院オープンホスピタルってどんなイベント?

※イベントは終了しています

京大病院オープンホスピタルは、医療職を目指す学生・高校生や一般の方に向けて、広く院内各部門の活動や京大病院の魅力を知ってもらおう!と、2006年から行っているイベント。今年は10月31日(土曜日)に開催されました。

病院の各部門の取り組みをわかりやすく紹介したパネル展示や、実際に使用している医療機器の展示などを、看護師や医師たちと会話しながら見て知ることが出来るほか、さまざまな体験ができるコーナーもあり、大人から子どもまで医療について楽しく学ぶことができます。

記念すべき10回目を迎えた同イベントに、広報Bも潜入。

普段は患者さんでいっぱいの京大病院の外来棟アトリウム(ロビー)ですが、この日はたくさんの笑顔と笑い声が響き渡りました!

体験ブース

体の動きに連動したセンサーでロボットが動く体験。「どうしてボクと一緒に動くの?」と不思議そう。

聴診器をつけて、お医者さん気分。いつか、ここで、白衣を着たきみたちに会えるかな。

倒れている人がいることを想定した心臓マッサージ体験。体験した人はみんな「こんなに力がいるんだ!」と驚いていました。

資生堂によるカバーメイクコーナー。がん治療の副作用や、火傷や外傷による皮膚のひきつれなどをカバーするメイクを体験。「化粧のちから」で患者さんの心を癒やすことも大切な医療の一つ。

妊婦さん体験をする男性。「腰にずっしりきますね・・・」と予想以上の重量感にびっくり。これでまだ7ヶ月くらい。もっと重くなるんですよ~!

お年寄りの大変さを知る「老人体験」。思った以上の動き辛さ、不安感・・・。こうして身をもって知ることで、日頃からもっとお年寄りに優しくなれそう。

ステージイベント

京大職員・学生による混声合唱団「かるがもあんさんぶる」による合唱。

恒例の「京大病院寄席」。桂雀三郎さんによる落語で会場も大笑い!

稲垣暢也 病院長による講演。テーマは「健康に長生きするために」。みなさん真剣に聴き入っていました。

「京大病院の最新医療の実は!」、いかがでしたか?

病院にかかることなく、健康で毎日を過ごすことが一番ではありますが、もしもの時でも安心して治療に臨める最新医療が京大病院には揃っています。

医療の進化の源にあるのは、何よりも「患者さんのために」という医療人の思い。その強い思いがある限り、京大病院はこれからもますますパワーアップしていきます!

関連リンク

京都大学医学部附属病院

http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/

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