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京都大学メールマガジン Vol.56
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目次:
◆巻頭言:企画担当理事・副学長 江﨑 信芳
◆白眉プロジェクト:千田 雅隆
◆大学の動き
◆研究成果
◆イベントのお知らせ
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◆巻頭言:企画担当理事・副学長 江﨑 信芳
本年の4月1日から教育情報の公表が法令により義務化されます。昨年の6月15日に学校教育法施行規則が改正され、公表すべき教育情報の項目が明示されました。具体的には、学科・専攻等の名称とそれぞれの収容定員・入学定員など、公表するのは当然で、本学としても既に公表しているものが大部分ですが、教員の保有学位のように、現在は必ずしも公表していないものも含まれております。この法令の趣旨からすれば、できる限り大学として統一したポリシーに従うのがよく、公表するかどうかは個々の教員の判断に委ねればよい、という方針は避けた方がよさそうです。
実は、話はこれで終わりではなく、努力義務という形で明示されている項目があります。「教育課程を通じて修得が期待される知識・能力の体系」ということで、どのようなカリキュラムに基づいて、どのような知識・能力を身につけることができるのか公表することが求められています。努力義務とはいえ、公表は各種の競争資金等の申請要件にすることが想定されております。競争資金とは、具体的には教育GPのようなものが想定されますが、本学はこれまでに教育GPをはじめとする各種の競争的資金の支援を受けてきており、この件と無縁ではありません。
また、義務でも努力義務でもありませんが、これら以外にも「発信が奨励される情報」として、明確な方針に基づく教育課程とその方針、教員の論文数・論文被引用数などの項目が挙げられています。博士課程教育に重点を置く大学にあっては積極的に公表することが求められる、となっています。今のところ、競争資金の申請要件にするとは書かれていませんが、自動的に積み上げられてきた運営費交付金が種々の項目に切り分けられ、競争的な形で配分される部分が今後増えていくでしょうから、本学としてもしっかり取り組む必要があると思っています。
教育情報の公表を求める理由は、社会への説明責任を果たし、教育の質向上と質保証を図るため、とされています。社会への説明責任は容易に理解できますが、情報公表がなぜ教育の質向上と質保証につながるのか、人によって理解が異なるかもしれません。とまれ、この機会に情報管理の在り方を根本的に考え直し、その結果、大学内部での種々の作業効率を向上させることに繋がれば大変よいことであり、結果的に教育の質向上につながる可能性は非常に高いと思います。皆様のご理解とご協力を宜しくお願いいたします。
◆京都大学次世代研究者育成支援事業「白眉プロジェクト」助教 千田 雅隆(ちだ まさたか)(整数論)
私は整数論と呼ばれる数学の一分野を研究しているのですが、特にゼータ関数やL関数と呼ばれている関数の整数論的性質に興味を持って研究に取り組んでいます。
ゼータ関数に関して多くの数学者がはじめに思い浮かべるのはスイス生まれの数学者オイラー(1707-1783)の研究ではないでしょうか。オイラーは1735年に当時有名だったバーゼル問題を解決しました。バーゼル問題というのは「平方数(自然数を二乗したもの)の逆数の和はどんな値になるか」という問題です。オイラーは1735年にこの値が円周率の二乗を6で割った数に一致することを発見しました(オイラーは一般に自然数を偶数乗したものの逆数の和が円周率の冪(べき)の有理数倍になることも見つけています)。
もっと一般に、複素数sに対して自然数をs乗して逆数の和をとったものが(リーマンの)ゼータ関数と呼ばれているものです。オイラーはバーゼル問題の解決以外にもゼータ関数が関数等式と呼ばれる対称性を持つことを見つけたり、上で考えたような級数は素数ごとの情報に分解できること(オイラー積表示)などたくさんの興味深い性質を見つけています。
その後、ドイツの数学者リーマン(1826-1866)がゼータ関数の解析的性質をさらに詳しく研究し、素数の分布がゼータ関数の性質を用いて調べられることを明らかにしました。素数とはそれ自身と1以外には約数を持たない2以上の自然数のことです。素数の分布は非常にランダムで規則性など一見ないように思えるのですが、実はゼータ関数の零点の様子から素数の振る舞いがわかってしまうのです。その研究の過程でリーマンは非常に有名なリーマン予想を提出しています。リーマン予想はその後の多くの数学者の努力にもかかわらず2011年現在でも解かれておりません。
私の行っている研究は上で述べたバーゼル問題の一般化と呼べるものです。現在ではゼータ関数は様々な拡張が知られており、その中でも保型形式(ほけいけいしき)と呼ばれる対称性をたくさん持つ特別な関数たちに対し、ゼータ関数が定義されています。保型形式のゼータ関数の整数点での値がどのようなものになるべきかということについては様々な予想がたてられており、私はそれらの予想をできるだけ多くの場合に解決したいと考えています。
整数論の問題は素朴な疑問から出発したにも関わらず、しばしば数学の深遠な世界につながっていることがあるようです。これからの展開がとても楽しみです。
◆大学の動き◆
○総合博物館が日本学術振興会アジア・アフリカ学術基盤形成事業に採択されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110210_3.htm
○松本総長がブータン王国・ケサン・チョゼン・ワンチュク王女殿下ご夫妻と懇談しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110212_1.htm
○総合博物館 小惑星探査機「はやぶさ」帰還カプセル特別公開 約1万7千名の入館者でにぎわいました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110206_1.htm
○京都大学はiPS-AJ社を通じてiPierian社にiPS細胞関連特許のライセンスを許諾し、iPierian社は同社保有のiPS細胞特許を京都大学に譲渡しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110201_1.htm
○ヴィクトル・フェドロヴィチ・ヤヌコーヴィチ ウクライナ大統領が本学を訪問されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110120_4.htm
○京都大学韓国総同窓会60周年記念会がソウル市内で開催されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110115_1.htm
○第4回湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞授賞式を挙行しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110119_1.htm
◆研究成果◆
○多様な機能的Tリンパ球の生成を担保する新しいメカニズム
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110214_2.htm
○HTLV-1 bZIP factorは発がんと炎症を起こす
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110211_1.htm
○多言語サービス基盤のアジアへの展開 -タイNECTECと言語グリッドの連邦制運営を開始-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110214_1.htm
○ご当地翻訳サービス「京大翻訳!」の運用開始
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100210_1.htm
○受容体GPCRの2分子結合・解離の定量計測に成功:分野横断的な薬剤開発研究に道を拓く
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110207_2.htm
○DNA分子モーターのリアルタイム観察に成功:ナノ・メゾスケールでの分子ロボットの開発へ
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110207_1.htm
○ウラン化合物における四半世紀の謎「隠れた秩序」を解明
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110128_1.htm
○「ちえのわ」型ナノ細孔を用いたセンサー開発に成功:動き、捕まえ、光って知らせるナノ多孔体
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110126_1.htm
○腸内細菌の制御と腸管粘膜防御には抗体遺伝子の体細胞突然変異が必要である
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110124_1.htm
◆イベントのお知らせ◆
○平成22年度 京都大学防災研究所研究発表講演会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110223_1.htm
○「京大地球系・建築系の国際展開 -その必然性と展望」シンポジウム
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110224_2.htm
○岩田ヒト膜受容体構造プロジェクト 研究成果報告会 プログラム
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110224_1.htm
○世界の友達と交流できる! パンゲア アクティビティ
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110226_1.htm
○京都大学市民講座
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110306_1.htm
○第17回白眉セミナー「太陽系外惑星と宇宙生物学」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110301_1.htm
○シンポジウム「自学自習が人を育てる」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110304_1.htm
○京都大学農学研究科 特別講演会 「世界の食料需給と我が国の食料・農業の現状」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110304_2.htm
○第2回 ナノバイオ創薬研究シンポジウム
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110305_1.htm
○公開シンポジウム「合成生物学と社会 -先端科学研究の進め方を考える-」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110308_1.htm
○留学生ラウンジ「きずな」月例イベント:弥生 日本の伝統芸能「落語」を楽しもう!
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h5/d2/news4/2010/110309_1.htm
○ウイルス研究所国際シンポジウム「ウイルス・遺伝子・疾患」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110311_1.htm
○人文科学研究所第7回TOKYO漢籍SEMINARの開催
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110312_1.htm
○レクチャーシリーズno.88 ジュニアレクチャー「薬毒同源の愉しみ」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110312_2.htm
○生態学研究センター 第2回オープンキャンパス
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110315_1.htm
○京都大学学際融合教育研究推進シンポジウム
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110318_2.htm
○京都大学大学院情報学研究科 「第2回 ミニ・オープンキャンパス」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news1/2010/100326_1.htm
○CiRA国際シンポジウム2011「iPS Cell Research:From Reprogramming to Clinical Application」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110401_1.htm
>>その他のイベント情報はこちらをご覧ください。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?type=monthly&c2=1
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