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  京都大学メールマガジン Vol.55
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   目次:
   ◆巻頭言:教育担当理事・副学長 淡路 敏之
   ◆総長メッセージ「人々との出会い(4)」
   ◆白眉プロジェクト:柳田 素子
   ◆大学の動き
   ◆研究成果
   ◆イベントのお知らせ
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◆巻頭言:教育担当理事・副学長 淡路 敏之

 昨年10月1日に教育担当の理事・副学長を拝命しました。それまでは理学研究科地球惑星科学専攻において、表層から深層までの海の流れと地球規模スケールの熱・物質輸送過程の解明、猛暑や冷夏さらには過日オーストラリアにおいて多大な被害をもたらし話題となった豪雨の原因であるエルニーニョ・ラニーニャ現象の診断と予測の革新、ならびに北太平洋における数十年スケールの気候変動と生態系・地球環境変動との連鎖の解明等、水もの相手の堅苦しい研究課題に、院生や国内外の研究者と連携して取り組んできました。また、ここ数年間は教育研究評議員や企画担当の理事補として全学の業務に従事してまいりました。

 ご存じのように、本学は1897年に創設以来、自由の学風のもと自主独立の精神を涵養し、多元的な課題に挑戦して地球社会の調和ある共存に貢献することを謳って、高等教育と先端学術研究を推進してまいりました。その結果、哲学の西田幾多郎博士に代表される京都学派や、湯川・朝永両博士をはじめとするノーベル賞、フィールズ賞、ガウス賞、ラスカー賞等の受賞の栄誉に輝く数々の研究、ならびに昨今iPS細胞研究で世界を揺るがす山中伸弥教授グループの研究等、未踏の学術を開拓してきました。

 このような背景には「先見性とチャレンジ精神」を何よりも大切にする京大スピリットがあると思います。本学では、入学直後からの全学共通教育において、先人の学びの発想と展開の脈略ならびに知と技法を「対話を根幹」に体系的自律的に学び、交流を通して構想豊かに考える全人的教養力を源泉に、学部教育において専門の学芸を深め、学術の最前線に触れつつ専門力と総合力を修得して、自らの志に果敢にチャレンジするという、伝統を重んじてきました。現代社会は益々複雑化・グローバル化しており、その渦中で専門的知識・能力を十全に発揮するには、多元的な視点で考察できる能力、自らの専門性を全体の中に位置づけて探求・活用しえる能力に加え、タフな人間力、広い心、深い人間的洞察力、そして健全な良識を身につけることが肝要です。かような全人教育を支える、総合大学ならではの調和のとれたブロードバンドな全学共通科目と順次性のある体系的な教育課程の編成を心がけ、社会から期待されている教育の質保証や現代的諸課題に応えるよう、一層努めなければならないと考えているところです。

 平成21年6月、総合科学技術会議第3期科学技術基本計画中間フォローアップにおいて、「地球環境問題、水・食料・資源・エネルギーの枯渇という、人類を震撼させている世界共通の諸問題の解決に対して、分野を超えた情報の共有と学際融合的教育経験が社会のレジリアンスに重要である」と指摘されています。まさに、「高度一般教育の理念」に基づく京大教育の出番が待たれていると言えましょう。教育担当の理事として、今般行った全学部対象のキャンパスミーティング等に基づく学生目線からの改善や、国際通用力の強化を目指し学部専門課程と接続したパッケージ教育等の新たな展開を視野に入れ、全学の協力を得ながら、21世紀における京大教育の発展の礎づくりに貢献したいと思っている今日この頃です。皆様方の一層のご支援、ご協力をお願いする次第です。

◆総長メッセージ「人々との出会い(4)」

 これまでの人生で出会った人々についてお話をさせていただいておりますが、今号も引き続き中学校時代について振り返ってみたいと思います。

4.中学校時代後半の思い出

 中学校時代は、子供から脱し、青春期のはじめに突入する頃です。多感であり、自分の内面や周辺の人たちとの関わりを模索し始める時期でもあります。小学校時代と異なり、担任の先生のみならず、科目担当の先生方との接点が増えました。前回紹介した職業家庭の先生以外に、多くの鮮烈な印象と大きな感化をうけた先生方のことが思い出されます。

 例えば、音楽の先生が、滝廉太郎の有名な『花』を教えてくださっている時、「君達の歌う『花』は原曲とは似ても似つかない、こう歌うんだ」、と歌ってくださった声は、今でも耳に生き生きとよみがえってきます。

 美術の先生や習字の先生にも多くのことを教わりました。放課後に居残って少女の石膏胸像を作ったり、美術の若い女性の先生のお宅にお邪魔し、先生が大切にしておられた美術全集を見せてもらいながら、先生の大学での生活ぶりや芸術論などを聞かせていただきました。そこではずいぶんと緊張していたことを今でも覚えています。

 また、英語の先生はあるお寺のお坊さんで、竹の根節を持って大変厳しく指導される怖い先生でした。しかし、私たちに色々なお話をしてくださり、英語の授業以外にも先生が話された言葉や思想には大いなる深みが感じられ、子供心にも大きな感銘をおぼえました。現在でも2、3年に一度は先生のお寺へ伺い、先生の博識と教養の深さに感化をうけつづけています。

 体操の先生は運動が苦手であった私に、「勉強だけできてもだめだぞ」とおっしゃって、怖がる私をかりたて、高鉄棒や跳び箱をできるようになるまで、時には厳しく、時には優しく指導してくださいました。高鉄棒では恐怖心からかなかなか飛び上がって鉄棒をうまく掴めない私は、先生に「何をしとんねん、もっと飛び上がれ」と檄を飛ばされ、愚かにも、目をつぶって思い切り飛んだ結果、頭頂部を鉄棒にぶつけて大変痛い思いをしました。体育の先生は、いつの時代も共通していると思いますが、やや厳しく指導され、怖い先生という印象でしたが、私たちはとても慕っていました。

 友人にも恵まれました。ひ弱だった私は屈強な親友にいつも助けて貰っていました。その友人と近所の公衆浴場にいつも一緒に行って背中を皮がむけるほど強く流しあったのも昨日のように思い出されます。体が弱く、泳ぎも上手くなかった私は、その親友に誘われて水泳部に入りました。2年生の夏休みの猛特訓では毎日ヘトヘトになり、テストの成績が少し落ちました。元来、勉強があまり好きではなかった私ですが、一方で大変な負けず嫌いだったので、その後は勉強もいい訳せずに頑張るようになりました。そのおかげかは分かりませんが、中学3年生では、先生方に郡山高校ではなく、奈良にある奈良女子大学附属高校への進学を勧められました。経済的に通学できる余裕があるかどうか心配でしたが、特別奨学金も貰えるからと説得されて受験しました。当時難関でしたが合格することができ、地元の中学校からは一人だけバスで奈良へ通学することになり、都会の洗練された高校への進学は半ば誇りと、そして半ば不安が入り混じった複雑な気持ちを私に感じさせたものでした。

◆京都大学次世代研究者育成支援事業「白眉プロジェクト」准教授 柳田素子(やなぎだ もとこ)(腎臓病学)

 私は白眉の中で唯一の医学部出身者で、専門は腎臓病学です。今や国民の500人に1人は透析を受けており、成人人口の5人に1人はその予備軍である慢性腎臓病だといわれています。治療薬の開発は急務ですが、いまだに決定的な治療法は開発されていません。

 腎臓病研究を困難にしている原因のひとつは、腎臓では10種類以上の細胞が存在し、きわめて複雑な構造を作り出していることがあります。これらの細胞が腎臓の中でネットワークを形成し、相互作用する仕組みはほとんどわかっていません。

 今回の白眉プロジェクトでは、さまざまな遺伝子組み換え動物を用いて、腎臓内の細胞間ネットワークを解明するとともに、腎臓病で障害されても修復できる細胞はあるのか、障害されると危機的な状況を招く細胞はどれか、その障害はどのように波及するのかを明らかにし、その知見をもとに、よりよい腎臓病治療薬の開発につなげたいと考えています。既に私のグループでは、腎臓には思っていたよりも再生力があることや、腎臓病の際に、その再生を妨げている物質を同定しています。

 白眉プロジェクトに入れていただいて1年がすぎようとしています。メンバーの専門分野が多岐にわたることから、自分の研究に興味を持ってもらえるかどうか当初は懸念していましたが、それは杞憂でした。他分野の学問に対するメンバーの知的好奇心は貪欲で、既成概念にとらわれない鋭い質問が続出します。その質問に答えていくことで、自分の研究が前進することをたびたび経験し、これこそが白眉の醍醐味だと実感しています。

 さらにこの白眉と前後して、国際腎臓学会のYoung Nephrologist(腎臓病学者) Committeeアジア代表になり、活動してきました。Committeeのミッションは、「世界の腎臓病学のレベルアップのために若手のできることをしよう」というもので、発展途上国でのワークショップ開催や、Young Nephrologists Awardの選定などを行ってきましたが、様々な国の代表者らと討議を重ねる中で、世界のニーズに気づく機会をいただきました。

 このようなさまざまな経験をさせてくださった諸先生方に感謝するとともに、残りの白眉の期間を通じて私たちは世界に何ができるのかについても考えてみたいと思っています。

◆大学の動き◆

○平成22年度日本学術振興会拠点大学交流事業「都市環境」コーディネーター会議を開催しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110114_4.htm

○欧州洛友会定例会in Londonが開催されました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/101217_2.htm

○インドネシア在住の本学日本人卒業生との懇談会を開催しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110109_1.htm

○東南アジア10カ国のASEAN常駐代表と山田ASEAN担当大使が東南アジア研究所員等を交えて意見交換会を行いました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/101220_2.htm

○第1回(平成22年度)日本学術振興会 育志賞に本学から2名が選ばれました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110114_1.htm

○「京大生がつくるキャンパスマップ「Welcome!京大」」を発行しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110113_1.htm

○大阪京大クラブ 平成23年新年祝賀会が開催されました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110107_2.htm

○FDのためのビデオ教材「FDを“やる”から“発見する”へ -活動に埋め込まれたFD-」を開発しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110107_1.htm

○iCeMSがNCBS-inStemサテライト開所式および合同シンポジウムを開催しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/101217_1.htm

○京都大学医学研究科社会健康医学系専攻設立10周年記念シンポジウムを開催しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/101113_3.htm

○京都大学学生チームが、合成生物学の世界大会iGEM(アイジェム)2010で金賞を受賞しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/101108_2.htm

○総長主催「外国人研究者との交歓会」を開催しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/101209_3.htm

○事務職員の海外インターンシップを実施しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/101120_1.htm

○第3回湯川・朝永奨励賞受賞者を決定しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/101222_1.htm

◆研究成果◆

○特定の細胞の生死を自在に制御するRNAスイッチ技術の開発
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110119_2.htm

○AesはNotchシグナルを阻害して大腸がん転移を抑制する
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110119_1.htm

○半分の磁束量子を発見
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110114_1.htm

○RNAとたんぱく質から成るナノサイズの三角形構造体の創製に成功-ナノバイオテクノロジー分野へ新材料を提供-
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110117_1.htm

○ミトコンドリアの機能不全により脱髄がおこることを発見
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110107_1.htm

◆イベントのお知らせ◆

○学術情報メディアセンターセミナー 「多言語・多文化教育とICT活用」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110125_1.htm

○京都人類学研究会1月例会
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110128_1.htm

○第45回 京都大学原子炉実験所学術講演会
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110127_1.htm

○市民講座「関西中国書画コレクションと京都大学」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110219_2.htm

○京都府・京都大学こころの未来研究センター 共同企画 第9回こころの広場「里山の生き物と人間のこころ」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110129_1.htm

○京都初公開 小惑星探査機「はやぶさ」帰還カプセル特別公開
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110206_1.htm

○教育学研究科附属臨床教育実践研究センター主催 第14回リカレント教育講座「「心の教育」を考える-対応に困る子どもたちへの多面的理解と関わり-」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110205_1.htm

○「第9回京都大学地球環境フォーラム」琵琶湖 その現状と未来
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110205_2.htm

○公開講座 平成22年度(第74回)京都大学 食と農のマネジメント・セミナ- 第1クラス 短期集中講義形式による複式簿記の原理と実践
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110209_1.htm

○公開シンポジウム「社会で築くゲノム科学の未来-ゲノム研究のガバナンスの構築にむけて-」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/1102101_1.htm

○京あるきin東京2011「京都の大学による特別講座」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110211_1.htm

○公開シンポジウム「日本の経済財政政策-2010年代の政策への提言」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110212_3.htm

○レクチャーシリーズno.87 ジュニアレクチャー「めったに咲かない竹の花が咲くとき…」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110212_2.htm

○平成22年度京都大学大学院人間・環境学研究科 公開講座「境界を科学する」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110216_1.htm

○第177回 アフリカ地域研究会
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110217_1.htm

○平成22年度 京の府民大学 アフリカ地域研究資料センター公開講座 創立25周年記念シリーズ 「アフリカ研究最前線:生きる」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110219_1.htm

○国際シンポジウム「高校/大学から仕事へのトランジション-自己形成の場としての学校教育の到来-」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110204_1.htm

○世界の友達と交流できる! パンゲア アクティビティ
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110226_1.htm

○京都大学市民講座
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110306_1.htm

 

 >>その他のイベント情報はこちらをご覧ください。
   http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?type=monthly&c2=1

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〒606-8501
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【お詫び】
1月21日に配信しましたメールマガジンvol.55において、巻頭言文中の本学創立年の記載に誤りがございました。
正しくは1897年であり、ここにお詫びとともに訂正いたします。