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  京都大学メールマガジン Vol.27
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   目次:
   ◆日本列島の生い立ち  尾池和夫
   ◆お知らせ
   ◆同窓会・その他
   ◆大学の動き
   ◆研究成果
   ◆イベント
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◆日本列島の生い立ち  尾池和夫

 総長室の東側の窓を通して見る景色には、ずいぶん深い感慨がある。私の下手な描写よりは一見にしかずで、ぜひ写真を見ていただきたいと思う。
  北山の隆起準平原から続く比叡山の山頂には将門岩と呼ばれている岩がある。砂岩ホルンフェルスである。丹波層群の砂岩が花崗岩の貫入によって強い熱変成作用を受けて焼けて堅くなったために、浸食されずに比叡山は高さを保っている。大文字の山頂も同じように堅い。
  比叡山と大文字の間の花崗岩は風化されやすい岩だから、どんどん浸食が進んで、白川の洪水とともに京都大学の吉田キャンパスの下の北白川扇状地を構成している。「志賀の山越」は『古今和歌集』などに登場し、都と近江を結ぶ重要な街道であった。荒神口がこの街道への都の出入り口で、中世には「今道の下口」「白川口」「坂本口」などと呼ばれた。その出入り口に今、稲盛記念会館が美しい姿を現し、また京大会館がその街道に面した休憩所の役割を果たしている。それとなく時代を超えて、存在感がある。
  花折断層の運動は、全体的には水平右ずれの活断層であるが、南端部では断層の東側に大きく隆起運動をともなうから、最近数十万年の運動で吉田山ができた。その吉田山を含めて、東山の四季折々の変化が総長室の窓から見える。
  第三高等学校の建物も、湯川博士や朝永博士が物理学を学んだ建物も、新しい八階建てのビルも、そして時計台も、総長室の東の窓からよく見えている。

 窓から見るこの景色に、1億2000万年の大地の歴史を感じ、111年の大学の歴史を思いながら、2003年12月16日から今まで、私は、21世紀の大学を考える日々を送ってきた。
  京都プロトコルで世界に知られるようになった京都で、最近の地球の歴史を考えていると、石油や石炭が大量に生み出され、地球の中からマグマがどんどん出てきて熱かった温室期地球のことが気になってくる。今より20度も気温が高かった地球は、自分の持つ仕組みで自分を冷やして今の地球になった。そして日本列島が今の位置に来た。

 日本列島の形成に大きくかかわっている太平洋は、大西洋ができる前から存在していた。約2億年前、アフリカと南米が離れていくという、よく知られた大陸移動をともなって大西洋が拡大するという前から、超大陸パンゲアと超海洋パンサラッサという対になって太平洋が存在していた。
  その頃には、今は存在しないいくつかのプレートがあって名前がついている。その一つにイザナギプレートがある。千島からユーラシアの下に沈みこんで消えてしまった海洋プレートである。このプレートはユーラシア大陸との境界に平行に運動して、この運動が日本列島の外帯を南から運んできて、アジア大陸の東の端にできて、やがて日本列島の内帯などになる部分にそれを付加した。その境に横ずれ型の中央構造線を生み出した。1億3000万年前(白亜紀前半)から7000万年ほど前のことである。
  2500万年前(第三紀中新世)、大陸の端が割れ始めて湖水群が生まれ、1450万年前、太平洋プレートの沈み込みで日本海が拡大して日本列島を大陸から離した。同じようにオホーツク海と千島列島もできた。糸魚川-静岡構造線の東側が沈降してフォッサマグナを生み出した。
  500万年前には伊豆、小笠原弧が本州へ衝突し伊豆半島となった。第四紀更新世、最終氷河期には海水面が今よりも120メートルほど低かった。このとき日本はアジア大陸と陸続きとなって象たちがやってきた。
  中央構造線は、世界的に見ても大規模な構造線で、紀伊半島の中程から西、大分から東の部分は今でも活断層として右ずれ運動をして、大規模な地震を起こす。全体は全長1000キロを超える構造線であり、日本列島はこの構造線で内帯と外帯に区分されている。内帯はジュラ紀以前に大陸の端に付け加わった付加体で丹波帯(所によっては、美濃帯、足尾帯とも呼ばれる)、高温低圧の条件で変成した領家帯などからなる。外帯は、白亜紀以降、1億8000万年前(ジュラ期)に南の海で生まれて、イザナギプレートに運ばれて、内帯の南側にくっついた付加体であり、秩父帯、四万十帯、低温高圧圧下で変成した三波川帯などからなる。

 ユネスコの支援するグローバルジオネットワークがある。まだ日本は加入していないが、数か所で今加入申請の準備をしている。候補地を選定するために、日本におけるジオパークの公式認定機関として日本ジオパーク委員会が2008年5月に発足して、私はその委員長をつとめることになった。
  日本は大地が動く変動帯にある島である。その変動帯の新しく生まれた大地にある地球の遺産を、子供たちに観察してもらって、学習してもらえる日本ジオパークネットワークをまず立ち上げながら、ユネスコの支援する世界のジオパークネットワークに参加し、地球環境のこと、エネルギーのこと、生物多様性のこと、自然災害の軽減のことなどを、経済活動からだけではなく、大地の仕組みから考えることのできるような人材を育てるきっかけにしたいと思っている。
  京都大学の基本理念にある地球社会の調和ある共存の言葉を、京都大学の卒業生の一人として、私もこのジオパークネットワークの考えに今後とも活かしていきたいと思っている。皆さまのさらなるご理解とご支援をお願いして、このメールマガジンのシリーズを締めくくることとしたい。
  長期にわたってご声援をいただき、ありがとうございました。


◆お知らせ◆

○10月からは、松本紘次期総長が、執筆します。
  京都大学メールマガジンを引き続き、よろしくお願い致します。

○ライブカメラを設置しました。
  本部棟東側の窓からの景色がお楽しみいただけます。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/profile/intro/photo/webcam/index.htm


◆同窓会◆

○第3回 京都大学ホームカミングデイ
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h8/d2/news4/2008/081108_1_1.htm


◆大学の動き◆

○博士学位授与式を挙行
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080924_1.htm

○京都大学と京都精華大学との連携協力に関する基本協定書の締結及びマンガ完成披露
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080917_4.htm

○第12回全学教育シンポジウム「京都大学における教育の現状と将来を考察する-第I期から第II期へ向けて-」を開催しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080913_1.htm

○次期理事就任予定者を内定しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080916_3.htm

○人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells; iPS細胞)の作製方法に関する特許が成立(日本)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080911_3.htm

○高井リサーチセンターの開設記念行事を実施しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080911_2.htm

○栄誉
・森 和俊 理学研究科教授が大阪科学賞を受賞しました。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080922_2.htm

○助成金等採択結果等
・文部科学省「大学院教育改革支援プログラム」(2件)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080911_1.htm

・文部科学省「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」(経営管理教育部)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080905_2.htm

・文部科学省「産学連携による実践型人材育成事業-サービス・イノベーション人材育成-」(薬学部)
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2008/080905_1.htm


◆研究成果◆

○痛みを伝達するペプチドの卵巣に対する作用をホヤで解明
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/080904_2.htm

○細胞分化を決定するゲノム中のメチル化塩基は、2重らせんの外に引き出されて認識される
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/080904_1.htm

○太陽磁場活動望遠鏡(SMART)が捉えた太陽フレアに伴う3連続衝撃波
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/080901_1.htm

○成体脳におけるニューロン新生の生理的意義の解明
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/080901_2.htm


◆イベント◆

○総合博物館 2008年秋季企画展 「シルクロード発掘70年―雲岡石窟からガンダーラまで―」

 パキスタン北西部のガンダーラ地方では、紀元後まもなく東洋と西洋の文化が融合し、仏像がつくられました。その影響のもとに中国で巨大な仏教寺院として成立したのが雲岡石窟です。京都大学では、人文科学研究所を中心に、仏教文化の源流を求めて、シルクロードの東西に位置する雲岡石窟とガンダーラ寺院址を70年にわたって調査してまいりました。それは精密な考古学的調査をつうじて仏教寺院の全体像を明らかにし、仏教東伝の足跡を掘りおこそうとするものでした。

 本企画展では日本の海外調査をリードしてきた70年をふりかえるとともに、調査で収集してきた文物をはじめて一般に公開いたします。日本ではほかにみることのできない発掘資料から、シルクロードを彩った仏教文化の魅力を存分にお楽しみください。

 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081227_1.htm

○京都大学春秋講義

【月曜講義】
・10月6日(月曜日)
  平田 孝 教授 (農学研究科) 「海からの贈り物 -海洋生物資源を未来につなぐ-」
・10月14日(火曜日)
  中務 哲郎 教授 (文学研究科)「海のギリシア文学」
・10月27日(月曜日)
  淡路 敏之 教授 (理学研究科)「観測とモデルの総力戦で海の全層を診る」

【水曜講義】
・10月8日(水曜日)
  稲垣 暢也 教授 (医学研究科)「糖尿病の早期発見-予備軍から生活習慣を-」
・10月15日(水曜日)
  松本 紘 理事・副学長 (次期京都大学総長)「京都大学と京都」
・10月29日(水曜日)
  長瀬 敬昭 法科大学院特別教授「裁判員制度が始まります!」

  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h8/d2/news4/2008/081029_1.htm

○平成20年前期 第24回公開講座 「シルクロード発掘70年―雲岡石窟からガンダーラまで―」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081025_1.htm

○京都市地域結集型共同研究事業・京都大学ナノメディシン融合教育ユニット 平成20年度活動成果報告会
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/080930_2.htm

○シンポジウム「21世紀の大学教育と人材育成:競争力の再生に向けて」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081004_2.htm

○ドイツ教育研究大臣講演会 「多国間研究政策-グローバル化の課題に立ち向かうために-」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081006_1.htm

○人文研アカデミー「アジアの仏教遺跡を掘る」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081030_1.htm

○第2回 食と農の安全・倫理シンポジウム ~食品汚染事故から学ぶ危機管理~
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081013_1.htm

○第37回インクルーシブデザインワークショップ バリアフリー上映をつくろう~字幕編~
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081015_1.htm

○第28回 こころの未来セミナー 『心の経済について:精神分析の貢献』
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081016_1.htm

○宇治キャンパス公開2008 宇治キャンパスからのメッセージ -未来を拓くみんなの科学-
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081019_1.htm

○学術情報メディアセンターセミナー「大規模テキストの言語処理への応用」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h12/d1/news4/2008/081021_1.htm

○学術情報メディアセンターシンポジウム 「T2Kシンポジウム2008 in 京都」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h12/d1/news4/2008/081024_1.htm

○農学研究科森林科学専攻・生存圏研究所 共催 公開講座「森が拓く未来」
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081026_1.htm

○産学公連携によるイノベーションの創出 ~第3回NEDO光集積ラボラトリーシンポジウム~
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2008/081029_1.htm

 >>その他のイベント情報はこちらをご覧ください。
   http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_event/event.htm

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