2022年秋号
輝け! 京大スピリット
体育会グライダー部
森 崇さん(農学部4回生)
大空を優雅に舞う航空機・グライダー。創部70年を数えるグライダー部は、月に一度は岐阜県の大野滑空場などへ合宿に赴く。操縦するのは動力を搭載しないピュアグライダー。機体につないだ長さ1キロメートルのロープを動力式の巻き取り機で一気に巻き上げると、凧揚げの要領で機体は空へと舞い上がる。「うまく上昇気流に乗るのが遠くまで飛ぶポイントです」。そう教えてくれた森崇さんは高校時代にはラジコングライダーに熱中した生粋の「空好き」だ。
部員たちは、インストラクターが同乗する練習用の機体で経験を重ねて、単独でのフライトを目指して研鑽を積む。動力のないグライダーにとって飛行を支えるのは目には見えない風だけ。もこもこと立ち昇る雲や空を飛ぶ鳥、温まりやすく上昇気流が生まれる住宅街やアスファルトの地面を目印に、空という空間を三次元で捉える力が求められる。「単独飛行は自分の腕だけが頼りという怖さはあります。それでも大空をひとりで飛ぶ愉快さはなにものにも代えがたい経験です」。
練習に打ち込みながら森さんが目指したのは、「操縦士技能証明書」という国家資格。一定の単独飛行の経験を条件に、口頭試験、学科試験、実技試験をクリアすることで、一人前のパイロットとして認められる。「ライセンスがないと単独での飛行には距離などの制限がある。いわば空を堪能するために欠かせないチケットです」。コロナ禍で練習できない期間を挟みながら、森さんはフライトを重ねた。「OBでもあるインストラクターの方々には『飛行回数に見合った経験を積めているか』と繰り返し問われました。天候に左右されない対応力がないとOBの方々から受験のゴーサインが出ない。認めてもらうまでが最大の難関でした」。
努力は実を結び、2022年5月にライセンスを取得。森さんは次なる目標として忘れられない景色を挙げる。「同乗するインストラクターの案内で飛んだ長野県の中央アルプスや南アルプスの景色はまさに神々しいの一言。次はあの風景を独り占めしたい」。「グライダーは浪漫」と語る森さんの探究心は、新たな空へ向けてすでに風を切り始めている。
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