2016年春号
京都大学をささえる人びと
飯田朋子さん
京都大学生活協同組合 管理栄養士
京都大学生活協同組合(京大生協)は、吉田・宇治・桂の三つのキャンパスで計11店舗の食堂・喫茶を運営。食堂のメニューは130品以上のラインナップを誇る。安くて、おいしくて、栄養バランスのとれた献立で、一人暮らしで不摂生しがちな学生はもちろん教職員の胃袋を満たしている。その人気の秘密を探ろうと、京大生協の管理栄養士、飯田朋子さんを訪ねた
「〈食〉に関心をもつことが、健康づくりのはじめの一歩!」と飯田さん。「生協食堂が安くておいしいのはあたりまえ。だいじなのは栄養バランス」。意外なことに、生協食堂には定食セットがない。「主食と主菜、副菜(小鉢料理)をうまく組みあわせれば、三〇〇円ていどでも充分に栄養バランスのとれた食事ができます。学生のころから栄養バランスを意識し、正しい知識や判断力を身につけて〈食の自立〉ができるようになれば、親世代になったときにかならず役だちます。目の前の学生の身体だけでなく、彼らの将来や日本の未来も支えている、それが生協食堂です」。
今、生協食堂が力を入れているのは、健康科学センター*1と共同開発した「ヘルシー弁当」。「高カロリーで野菜の少ないできあいの弁当ばかり食べている学生が多いことが気になっていました。カロリーを抑えつつ、野菜もたっぷりの自信作です。食堂で順番待ちする時間も惜しいという方にオススメです」。生協食堂ではそのほかにも、学生目線のきめ細かなサービスを展開。「今月の生活費が足りないから」と食事を抜く学生が多いことを受けて、一日の利用上限額と利用期間とを組みあわせて前払いすることで利用料を割引く「ミールシステム」もその一つ。食事履歴がスマートフォンで確認できるので、わが子の食生活を案じる保護者の支持も上々だ。
管理栄養士として京都、滋賀、奈良のさまざまな大学の学生たちの食事情を見つめつづけてきた飯田さん。特筆すべき「京大生の特徴」は、副菜の選択率の高さ。いろんな小鉢メニューを組みあわせて、バランスよく食べようという意識は高いようだ。「でもよく観察すると、なかには、『ご飯、主菜、納豆、冷奴。全部タンパク質! 野菜は?』ってつっこみたくなる学生もいます」。
生協食堂のメニューカードには、料理の写真の隅に3群点数法*2による栄養バランスと4種類の栄養価が表示されている。手渡されるレシートには、注文したメニューの総カロリーのほか、タンパク質やカルシウム、塩分、野菜の量も印字され、なにが不足しているかが一目でわかるしかけ。「若者はカルシウムが不足しがち。体を鍛えたい学生ならタンパク質量が気になるはず。自分の食事内容をふり返って、『このごろ野菜不足だから、今晩は野菜炒めでもつくろうかな』って意識するきっかけになれば……」。
学生にとっては、いたれりつくせりのサポート体制だが、それを自身の健康に結びつけられるかは利用者の意識しだい。「京大生は頭で食べると表現されてきたように、情報をうまく利用する積極性がある。一人ひとりときちんと向きあえば、まじめにとりくんでくれると信じています」。その力強いことばは、豊富な知識と経験、地道な努力に裏づけられている。あなたの胃袋も、飯田さんに預けてみませんか。