平成17事業年度決算を公表するに当たって
今般、9月1日付けで財務諸表が文部科学大臣の承認を受けましたので、ここに開示いたしますとともに、法人化2年目の本学の決算の概要についてご説明いたします。
・貸借対照表
本学の財政状態を明らかにするため、決算日(平成18年3月31日)におけるすべての資産、負債及び資本を記載しています。
(資産)
資産総額は約3,919億円で、16年度に比べ約82億円増加しています。
建物については、17年度の施設整備事業として、総合研究棟(桂)の建設、アスベスト対策事業による総合体育館等の改修や総合研究棟(農学部、旧工学部4号館、法経本館)の改修等を行っています。図書については、17年度において約13万冊購入し、蔵書数は約615万冊となっています。現金及び預金としては約298億円計上していますが、その主な内訳は、寄附金残額(約140億円)、未払金相当額(約142億円)、定期預金(2億円)です。
(負債)
負債総額は約1,278億円で、16年度に比べ約58億円減少しています。
借入金には、法人化前に財政投融資資金を財源として取得した附属病院の資産等に係る借入金である国立大学財務・経営センター債務負担金(約350億円)と、附属病院における設備充実のため法人化後に国立大学財務・経営センターから借り入れた長期借入金(約5億円)があります。なお、17年度には、補正予算により施設整備資金貸付金償還時補助金の長期借入金(約183億円)を全額返済しています。長期未払金の約108億円は、16年度に引き渡しを受けた福利・保健管理棟(桂)、総合研究棟(南部)等のPFI事業に係る未払金です。
(資本)
資本総額は約2,642億円で、16年度に比べ約140億円増加しています。
資本剰余金については、補正予算により長期借入金(約183億円)を全額返済したことに伴い、借入金により取得していた固定資産相当額を計上しています。その他、施設費補助金等による固定資産の取得(約27億円)等により増加していますが、損益外減価償却累計額の増(約109億円)や固定資産除却分の減(約5億円)などにより、資本剰余金全体では約92億円を計上しています。利益剰余金については、16年度の利益剰余金のうち、本学の運営努力により生じた資金の裏付けのある利益であり文部科学大臣の経営努力認定を受けた目的積立金を約24億円、会計処理上発生した資金の裏付けのない利益である積立金を約37億円、それぞれ計上しています。
・損益計算書
本学の運営状況を明らかにするため、一会計期間(平成17年4月1日〜平成18年3月31日)におけるすべての費用と収益を記載しています。
(費用)
費用総額は約1,172億円で、16年度に比べ約78億円減少しています。
受託研究費等は約117億円で、受入件数の増により16年度と比べて約26億円増加しています。また、人件費は約598億円で、16年度と比べて約11億円減少していますが、退職手当の減(約7億円)と非常勤職員の減(約4億円)が主な要因です。なお、16年度においては、法人移行時限りの臨時的な損失があり、約98億円の臨時損失を計上していましたが、17年度においては、少額になっています。
(収益)
収益総額は約1,215億円で、16年度に比べ約96億円減少しています。
運営費交付金収益は約588億円で、16年度と比べて約22億円減少していますが、退職手当の繰越(約18億円)や成果進行基準適用事業の繰越(約1億円)等によるものです。また、受託研究等収益は約120億円で、受入件数の増により16年度と比べて約21億円増加しています。なお、16年度においては、法人移行時限りの臨時的な利益があり、約118億円の臨時収益を計上していましたが、17年度においては、少額になっています。
(当期総利益)
収益から費用を差し引いた当期総利益として約43億円を計上しています。この額は資本の当期未処分利益の額と一致します。このうち、国立大学法人に特有の会計処理により生じた資金の裏付けがない帳簿上の利益が約13億円、附属病院収入の増収や経費の削減等の本学における運営努力により生じた資金の裏付けがある利益が約30億円です。なお、本学の運営努力によって生じた利益については、目的積立金として文部科学大臣の承認を受けた後、18年度以降、中期計画を踏まえながら効率的な活用を図っていくことになります。
平成17事業年度の本学の決算の概要は以上のとおりです。詳細は開示いたしました財務諸表等及びファイナンシャル・レポートをご覧頂きたく存じます。
京都大学の高い研究・教育レベルや幅広い社会貢献を維持発展して行く上で最も重要なことは大学教職員の個々人の大学の使命の認識、法人化によって与えられた裁量権の活用と考えます。本学の競争力強化、自由の学風の尊重と組織の柔軟性、きちんとした説明責任などは、大学全体の運営状況の改善において常に念頭に置くべき重要要素だと考えています。また、様々なデマンドに応えるため、フロー管理、ストック管理、透明性の確保などを充実しなければなりません。その上で中長期的収支バランス、資金確保、有効な資源配分、資産管理などを行うことが重要であり、各部局や大学全体の財務状況の俯瞰的な把握が今後ますます必要とされると考えています。
京都大学は「社会に開かれた大学」を目指しています。学生からの納付金、国民の税金、企業や個人からの寄附金など、様々な人々の支えにより成り立つ本学にとりまして、教育・研究・医療を着実に実施するとともに更なる充実を成し遂げるためには、本学を支えていただいている方々にその活動をご理解いただくことが不可欠であると考えています。今回開示いたしました財務諸表等が、本学の活動を財務の視点からご理解いただくための糸口となり得ましたら幸いです。
京都大学理事(財務担当)
松本 紘
|