わたしの京大力

No.013
大西 信徳

森林保護や環境問題の解決に貢献したい。
人工知能とドローンを駆使する
ベンチャー企業を設立。

農学研究科 博士後期課程 3年生 大西 信徳

Profile

東京都出身。高校時代から環境問題に関心があり、研究の第一線を走る京都大学への進学を志す。2013年京都大学農学部森林科学科に入学し、伊勢武史准教授の研究室に所属。2017年より同大学院農学研究科在籍。2019年には京大生チャレンジコンテスト(SPEC)に「風を見つけて高く遠くへ~トンビの飛行法を模倣したドローンの長距離飛行の挑戦」が採択され、研究資金50万円の寄付募集に成功した。卒業後、ベンチャー企業の設立を予定している。

京大の研究林からはじまった、AIによる樹種判別法の研究。

 私が研究しているのは、森林など広い範囲に分布する樹木の情報を画像から解析する技術の開発です。ドローンを飛ばして画像を撮影し、人工知能(AI)によるディープラーニングで画像を解析します。どの場所に何の樹種が生えているかを自動的に判別し、適切な森林整備や保全に役立てることをめざしています。

 もともと環境問題に興味があった私が、ドローンや人工知能の開発に携わるようになったのは、恩師である伊勢武史准教授の影響です。伊勢先生は、森林や湿地の生態系や地球温暖化をコンピュータシミュレーションで再現する研究に取り組まれている方です。京大に進学した当初、WordやExcelを使える程度の知識しかなかった私に、伊勢先生は「この3台の部品をあわせると1台使えるパソコンができると思う。自力で直してみてごらん。好きに使っていいから」と、壊れたパソコンを3台くれました。これがきっかけになり、工学の知識やスキルを独学で深める術を覚えました。

 ドローンとディープラーニングを組み合わせて樹種判別に役立てようと考えはじめたきっかけも、伊勢先生でした。研究対象に悩んでいた私に京都の美山にある京都大学の芦生研究林に行ってはどうかと声をかけてくださったんです。そこで芦生研究林に1人で出かけ、3日間ほど研究者や技術職員の方々の仕事をお手伝いさせてもらいました。そのなかである技術職員さんが「ドローンで木の高さとか細かいデータが収集できたら便利なんだけどね」とおっしゃったんです。現場にそうした明確な課題があることを知り、面白い、と思いました。

 私は、研究を通じて何かしらの真理を解明することより、研究成果を社会に実装して役立ててもらうことにやりがいを感じます。ディープラーニングによる画像解析の研究は、農学の研究領域からはやや離れた内容でしたが、これが社会の役に立つと思えたから戸惑うことなくチャレンジができました。

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ドローンの飛行時間が短いことに課題を感じ、トンビに着想を得た長時間飛行するドローンの開発に挑戦。同ドローン開発は「京大生チャレンジコンテスト2019」にも採択された。固定翼のドローンに上昇気流を感知する人工知能プログラムを組み込んだ試作機は離陸できず、あえなく失敗。しかし、「いつかは実用できたら」と、大西さんは開発を続けていく予定だ。

森林の価値を分析し、自然環境の保護を推進したい。

 今年4月、京都大学の産学共同実用化促進事業「インキュベーションプログラム」を活用して、私が事業化推進責任者となり、伊勢先生に研究開発責任者になっていただき、ベンチャー企業の設立に向けて動き始めました。

 起業を決意したのは、私が研究している樹木の情報を自動的に取得する技術が社会の役に立つと考えたからです。実はこの研究を論文発表したところ、水資源開発に取り組む国内メーカーから問い合わせがあり、共同研究という形で同企業が保有する森林の植生調査を行うことになりました。また他にも国内外から多数の問い合わせがあったことから、「この技術は需要がある」と確信しました。

 私たちが開発しているディープラーニングで樹木の情報を自動取得する技術は、森林整備を希望する市町村、林業、飲料水メーカー、バイオマス発電会社などに必要とされると考えており、ゆくゆくは海外展開も視野に入れています。たとえば、熱帯雨林に植生する樹種やその分布を識別できると生物多様性がわかり、森林としての価値が明確になります。価値が理解されることによって、保全や保護活動が活発になるかもしれません。もともと私は環境問題に興味があって、京大農学部に進学しました。起業を通して環境問題の解決に貢献できれば、とてもうれしいです。

わたしの京大力MY KYODAI-RYOKU

やりたいことに挑戦するチャレンジ精神。挑戦から生まれた課題を一つ一つ解決していく力。

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