地熱発電は環境に悪くて非効率?!
その常識を打ち破り、
世界のエネルギー事情を変える挑戦。
工学研究科 修士課程1年生 合田 元英
神戸市出身。2016年より京都大学工学部物理工学科、2020年より同大学院工学研究科原子核工学専攻に在籍。環境適合性の高いエネルギーシステムを研究する横峯健彦教授のもとで、新方式の地熱発電の研究に取り組むとともに、株式会社Geo Power Innovationの最年少スタッフとして活動。地熱発電所の開発プロジェクトや、地熱発電のコンサルティングに従事している。
新しい地熱発電で、世界のエネルギー事情を変える。
地熱発電に興味を持ったのは、工学部3年生のときに、日本CEO協会が主催するシンポジウムに参加したのがきっかけです。「優秀な経営者・起業家を輩出することで、社会課題を解決し、持続可能な社会の実現をめざす」という趣旨に興味を抱いて参加したのですが、そこで電力関係のグループ会社を多く持つTeam Energy 株式会社の方たちと知り合い、地熱発電の可能性について教えていただきました。
もともとわたしはエネルギー事情に関心があり、工学部でも主にエンジンや熱サイクルについて研究をしていました。わたしが発電システムに求める条件は、大量の消費に耐え、かつ安定して長期利用できること。太陽光や風力、潮汐発電などのいわゆる自然エネルギー発電は安定・長期発電には向かないため、どちらかというと原子力発電の方に関心がありました。
しかし、Team Energyに招かれ、彼らが取り組むプロジェクトなどでもかなり中心的な役割を担わせていただくなかで、徐々に地熱発電への興味が高まるように。「新しい方式の地熱発電ができれば、世界はガラリと変わるのでは? 面白そうだやってみたい!」という想いが強くなったのです。京大の大学院に新方式地熱発電の研究に取り組む横峯健彦教授がいたことも、わたしにとって幸運なことでした。横峯教授は原子力のエネルギー転換を主に研究されているのですが、それを転用して地熱発電に応用することを初めて提唱したされた方としても知られています。
さらに今年の秋からTeam Energyが子会社として立ち上げた株式会社Geo Power Innovationの社員となり、新方式の地熱発電所を立ち上げるプロジェクトに取り組むことになりました。成功すれば、環境への負荷が少なく効率よく発電できる、従来の地熱の問題点を克服した発電所が完成します。自分も含め世の中が「不可能」だと思っていた常識が「可能」へとひっくり返るかもしれない。わたしがワクワクするのは、そうした瞬間に立ち会えることですね。
三井住友金属鉱山の工場を見学。京都大学の授業では、貴重な出来事をたくさん体験している。
Geo Power Innovationでの作業風景。環境への負担が少ない新たな地熱発電を実現するために、日々活動に取り組んでいる。
失敗を泥臭い努力で成功へと変える京大生のたくましさ。
今のわたしがあるのは、京大生というネームバリューに助けられた部分も正直大きいと思っています。ですがそこに胡座をかいているわけではありません。わたしを含め京大生って、周りの期待に応えるために陰で泥臭い努力をしていますし、失敗や挫折もたくさん経験しているんです。わたしもそうでしたが、高校までは自分に絶対の自信があっても、京都大学に入学すると自分より能力が高い人がたくさんいて、思い上がりをへし折られました。でも周りを見たら、同じように苦しみながらも泥臭く頑張る人がたくさんいる。そこに気づいたことで、前向きに成長できたのだと思います。
失敗は苦しいものですが、乗り越えた先には成長が待っています。そして、たくさんの失敗をひとつずつ乗り越えた先に、真の意味での成功が待っているんだと思います。大切なのは、「常識を常識と思わない」こと。常識的ではないと言われていることでも、それはまだ誰も成功してないだけなのかもしれません。臆さず突っ込んでいくことが大事だと思っています。
わたしのように、院生でありながら企業で社会人の方々と一緒に働くのも、常識的にはあまり考えにくいことだと思います。Geo Power Innovationは小規模ながら、環境評価のアセスメントの専門家や地熱の専門家、施設設計のコンサルタントをしてきた方など、さまざまなプロフェッショナルが集まってできた会社です。誘っていただいた時は正直、わたしなんかが入っていいのか迷ったのですが、「臆することなくやってみよう。失敗したときは、それをもとに成長すればいいから」という気持ちで飛び込みました。
会社では現在、熱源への掘削深度や発電機の選定に関わるエネルギー効率の数値的な計算や仕様決定のサポートをしています。今後は研究と実務を並行しつつも、いつか自身で地熱コンサルティングの会社を立ち上げたいですね。そのためにも、今は京大生らしく、泥臭く頑張っていくつもりです。
常識は常識と思わず、失敗をチャンスととらえて成長や成熟につなげる力