わたしの京大力

No.004
星谷 真子

社会人を経て医学部へ学士入学。
高齢化社会の医療のニーズに応える
「NP制度」をアメリカで現地調査。

医学部 3年生 星谷 真子

Profile

幼少期をオーストラリアで過ごす。高校時代に公益財団法人AFS日本協会を通じてアメリカへ1年間留学。金融機関での勤務を経て、2019年4月に京都大学医学部人間健康科学科に学士入学。アメリカなどで導入されている上級の看護職NP(Nurse Practitioner)制度に興味を持ち、2019年度「おもろチャレンジ」を利用して渡米、現地調査を行う。部活動はバーベル部、MESS(Medical ESS)、MSB(Medical Students without Borders)などに所属。

社会人を経て学士入学し、心機一転、医療分野に飛び込む。

 私は高校生の頃から人と関わる仕事に興味があり、国際交流団体でのボランティアや国連のプログラムなどに参加していました。しかしその活動を通じて物事を動かすにはお金の流れを知ることが大切だと考え、大学を卒業して就職したのは金融機関でした。仕事はとてもやり甲斐がありましたが、一方で「もっと人と直接向き合い、役に立てる仕事がしたい」という気持ちは日に日に強まり、ある日、新聞の医療欄を夢中で読んでいる自分に気がついたのです。その後、京都大学OBの父が「京大フォーラム」にパネリストとして参加されていた医学部の教授を紹介してくれました。その先生と直接お話をしたり、大学を案内していただく機会に恵まれ、「これだ!」と確信しました。

 医学部に入学してから実習で訪れた病院では、点滴や人工呼吸器につながれて「自宅に帰りたくても帰れない」と話す高齢者の方の声を耳にしました。高齢化率世界一の日本では、治療だけに焦点を当てるのではなく、患者さん一人ひとりの生活の質を総合的に高める医療がますます必要になってくるのではないか。そんなことを肌で感じ、現在の医療の在り方に疑問を持ち始めるきっかけとなった体験でした。

 日本の医療体制が抱える課題を意識しはじめた頃、高校時代にアメリカ留学で知り合った友人が現地でNPの学校に進学すると耳にしました。耳慣れないNPという仕事について調べてみると、一定レベルの診療や薬剤処方を行うことができる看護師のことで、病院でのチーム医療はもちろん、在宅医療や地域医療でも活躍しているエキスパートだということがわかりました。アメリカではすでに制度化されているNPですが、同じく医療先進国と言われる日本では導入されていません。NP制度に日本の医療をより良くするヒントがあると考えて、「おもろチャレンジ」を利用してアメリカで現地調査することを決意しました。

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「おもろチャレンジ」でお世話になったロサンゼルスの医療関係者たちとの一枚。アメリカでの調査では、医療現場を知るだけでなく、さまざまな考えや価値観にも出会えた。

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MESS(Medical ESS)のメンバーと参加した、WJEMA(West Japan ESS Medical Student Association)の夏季総合大会。部活動にも積極的に参加し、視野を広げている。

アメリカの医療制度を学び、パッションに触れた3週間。

 3週間の現地調査にあたり、教授や高校留学時代の知人のツテをたどって現地の大学の教授、医療機関の方などに事前にアポイントを取っていました。しかし新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた時期で、予定していた一部の行程はキャンセルに。それでも体当たりでコンタクトを取って、医療機関を見学させていただいたりNPとして活躍されている現地の方にお話を聞いたりといった数々の出会いに恵まれました。医療現場のフレキシブルな勤務体制、各医療職が専門性を発揮できるチームワーク、データ分析により医療を可視化する仕組みなど、NP以外の制度についても学べることが多かったです。

 サンフランシスコのあるクリニックの医師をシャドーイングした時、診療中でも「質問ある?」と何度も聞かれ、医療だけでなく政治や経済の話題にも「あなたはどう思うの?」と意見を求められたことが印象に残っています。日本だと「空気を読む」ことが当たり前になっていますが、アメリカでは全く逆でした。この方は州の医療方針を決定する場に黒人が一人も参加していないことを疑問視し、自ら州議会議員にも選出されていて、とにかくパッションがすごいんです。当たり前の現状を疑い、変革していこうとする姿勢にとても感銘を受けました。

 京都大学に入学してから数多くの教授や学生との出会いに恵まれ、変化を恐れず別の道にチャレンジしてよかったと心から思っています。中でも、京都大学OGの久能祐子さん(現京都大学理事)、仲暁子さん(Wantedly創業者)とお話しした際、変化を恐れず何度でもチャレンジし続けることは決して間違っていないと確信し、とても勇気づけられました。

 今後さらに高齢化と医療の問題に切り込んでいくために、現在は医療のIT化を実践されている方や医療施設を経営されている方、海外で医療従事経験がある方などにお話をお聞きすること、また海外大学の医学生と議論したり大学院の授業へ参加したりすることで活動を続けています。別分野の勉強や社会人経験を活かしつつ、今後もいろいろな価値観と知見を吸収して、もっともっと視野を広げていきたいと思います。

わたしの京大力MY KYODAI-RYOKU

世の中の「当たり前」を疑い、変化を恐れず何度でもチャレンジし続ける力

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