皆が同じ方向をめざす
行進は
もとより気味が悪い。
そうはならない「自由」を
保ちつづけてほしい。
小説家
綾辻 行人
京都大学教育学部 1984年卒業
京都大学大学院教育学研究科 博士後期課程 1989年
単位取得修了
僕が入学した当時、京大には心地好くも刺激的な混沌があった。古びたキャンパスにも、そこに集まった者たちにも、彼ら(僕ら)が抱く想いにも。「多様性」という言葉は似合わず、決して「安心・安全」でもない。「自由の学風」と云われるが、その「自由」のある部分は確かに、あの混沌の中にも強く息づいていた。振り返ってそう実感する。
歳月を経て、京大の風景もさまざまに変わりつつある。時代による変化は必然だが、皆が同じ方向をめざす行進はもとより気味が悪い。そうはならない「自由」を、この先も保ちつづけてほしいと願う。
2021.09.09 THU