漫画に携わる原点を思えば
虚構に逃避する自分を
包みこんでいた
京都の風景が甦る。
講談社 Kiss・BE LOVE編集部 副編集長
田岡 洋祐
京都大学文学部 2008年卒業
京大で過ごした4年間は、将来の不安に押しつぶされそうになりながら、ことさら勉学に勤しむでもなく、虚構の世界に逃避していました。
おそらく自分と近い景色を見ていたであろう森見登美彦さんが紡ぐ小説をはじめ、空間どころか時間さえも飛び越えさせてくれる古典文学、(なぜか同性しかいなかった)学友たちとの会話から広がる名もなき妄想…。
「輝いていた」とはとても言えませんが、漫画編集という今の仕事の原点を思い返すときに甦るのは、そんなどうしようもない日々を送る自分に「好きにしたらええやん」と語りかけているような、時計台や鴨川といった京都の風景です。
後ろ向きに見える自由だって、何かに繋がるかもしれない。
願わくば、自分が携わる物語も、125年かそれ以上、長く愛されるものになりますように。
2021.07.29 THU
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