探究の契機が溢れる
京大の日常から、
自由の海を渡る
良き道標を見つけて。
女流棋士(女流1級)
桃山学院大学経営学部ビジネスデザイン学科
教養・文化科目担当講師
毎日新聞観戦記者
山口 絵美菜
京都大学文学部 2018年卒業
冬のある日、一回生の私は珍しく一限に間に合った。週替わりのリレー講義、心理学の回。「記憶は11歳頃を境に感覚記憶から意味記憶へと変わる」。教授の言葉にはっと顔を上げた。11歳は私が将棋を始めた年齢で、この世界では晩学。将棋を「体で覚えた」棋士との形容しがたい差に悩まされてきた。「私は何のためにここに来たのか」、上達の鍵がここにある。そう確信した瞬間の、だだっ広い教室にまばらな学生の姿、降り注ぐ陽射しの眩しさをこの先も忘れることはないだろう。
日常の中に探求の契機は溢れている。けれども、羅針盤がなくては航路を決めることは出来ない。皆さんが茫洋たる自由の海にたゆたいながら、良き道標を見つけられることを願う。
2020.02.20 THU
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