サイエンス搭載論文の説明について(13.10.26、於:大学記者室)
説明者 化学研究所 教授 岡 穆 宏
助手 酒 井 啓 江
内容:
植物ホルモンの一種、サイトカイニン、は細胞分裂・葉緑体分化・ シュート(茎と葉)
形成など幅広い生理的事象に関わっている。二成分制御系(細胞膜に局在するタンパク質
ヒスチジンキナーゼと細胞質性の応答因子から成る)はバクテリアにおいて種々の環境応
答に関わっているが、近年高等植物にも類似のヒスチジンキナーゼ(ETR1、CRE1)がエチ
レンやサイトカイニンの受容に関与していることが明らかにされてきた。
今回、細胞質性の応答因子(ARR1)がサイトカイニン応答の最も初期段階の転写因子
として働いていることを明らかにした。このARR1は、おそらくCRE1を介して、サイトカ
イニンシグナルを受取り、活性型となり標的遺伝子の転写を促進する。ARR1を過剰発現す
る形質転換シロイヌナズナはサイトカイニンに対する感受性が高くなる。逆にARR1遺伝子
の変異株(かずさDNA研究所との共同実験による)は逆に感受性が低下する。構成的に活
性型のARR1を合成する形質転換シロイヌナズナは不規則なシュート形成や根の伸張阻害な
どサイトカイニンの作用が観察される。これらの事実からARR1はサイトカイニン初期応答
の中心的な転写因子型応答因子結論される。【写真】